顧問契約は死亡で終わるのが原則
委任は、委任者または受任者の死亡で終わります(民法653条1号)。法律行為でない事務の委託(準委任)にも同じ定めが準用されます(民法656条)。顧問契約が委任(準委任)にあたる場合、社労士が亡くなった時点で顧問契約は終わります。
実際の扱いは、顧問契約書の定めによっても異なるため、契約書もあわせてご確認ください。
顧問先で困ること
顧問先は、社会保険・労働保険の手続きや給与計算などを頼んでいた相手がいなくなります。顧問先は、自社で手続きを行うか、別の社労士に依頼する必要があります。
社会保険・労働保険の手続きには、それぞれ期限があります。顧問先が期限の近い手続きを抱えていないか確かめられるよう、早めに連絡してください。
ご遺族にできること・できないこと
できないこと:社労士の業務を代わりに行うこと
社労士または社労士法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、社労士の業務(書類の作成、提出の代行、事務代理、帳簿書類の作成など)を業として行うことはできません(社会保険労務士法27条。業務の範囲は社会保険労務士法2条1項)。社労士となるには、社労士となる資格を持つ人が、連合会の社労士名簿に登録を受ける必要があります(社会保険労務士法14条の2第1項)。
しなければならないこと:急ぎの場合の必要な処分
委任が終わった場合に急迫の事情があるときは、受任者の相続人は、委任者が委任事務を処理できるようになるまで、必要な処分をしなければならないと定められています(民法654条)。
ただし、ご遺族は社労士の業務を行えないため、この「必要な処分」としてできることには限りがあります。迷ったときはご相談ください。
顧問先への連絡のしかた
委任が終わったことは、相手方に通知したとき、または相手方が知っていたときでなければ、相手方に主張できません(民法655条)。顧問先には早めに知らせてください。連絡では、次のことを伝えます。
- 社労士が亡くなったこと
- 顧問契約が終わること
- 預かっている書類・データの返却や、引き継ぎの方法
- 今後の連絡先(ご遺族の窓口、または引き継ぎ先)
引き継ぎの方法
- 顧問先がそれぞれ新しい社労士を探す:ご遺族は書類の返却などに対応します。顧問先の数が多いと、ご遺族の負担が大きくなります。
- 引き継ぎ先の社労士法人が、まとめて顧問先に案内する:引き継ぎ先を決めてから顧問先に知らせ、承諾した顧問先と引き継ぎ先が契約します。引き継ぎ先から、事務所の価値に応じた対価が支払われます(対価の目安)。
- 社労士法人として続ける:亡くなった方が社労士法人の社員だった場合です。社員が1人の法人でも、相続人の同意を得て新たな社員を迎え、法人を続けられる場合があります(社会保険労務士法25条の22の2。社労士法人の場合)。
引き継ぎのときに、顧問先と引き継ぎ先が新しく契約を結ぶのか、元の契約上の地位を移すのかは、状況によって異なります。
書類・データと秘密を守る義務
- 開業社労士と社労士法人の社員は、正当な理由がなく、業務で知った秘密を漏らしたり盗用したりしてはならず、社労士でなくなった後も同じです(社会保険労務士法21条)。
- 事務所の職員も同じ義務を負い、職員でなくなった後も続きます(社会保険労務士法27条の2)。
- 個人情報保護法では、合併その他の事由による事業の承継に伴って個人データが提供される場合、受け取る者は「第三者」にあたらないとされています(個人情報の保護に関する法律27条5項2号)。マイナンバーを含む特定個人情報も、事業の承継に伴う提供は認められています(番号法19条6号)。
社労士が亡くなって契約が終わった後に、ご遺族から引き継ぎ先へ書類・データを渡すことが、これらの「事業の承継」にあたるかは、事情によって判断が分かれることがあります。書類・データは処分・持ち出しをせず、そのまま保管し、引き渡しの前にご相談ください。
亡くなった方が受け取るはずだった未収の報酬の扱いは、契約の内容などによって異なるため、詳しくはご相談ください。
引き継ぎの対価の目安
ご相談・査定は無料です。引き継ぎ先の社労士法人から、事務所の価値に応じた対価が支払われます(目安:年間売上の0.3〜0.5倍)。
※ 目安であり、顧問先の構成・契約内容などによる個別査定で決まります。
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