特定口座とは?源泉徴収あり・なしで確定申告の必要性は変わるのか解説
特定口座とはどのような口座なのでしょうか。本記事では、確定申告の有無や損益通算、特定口座特有の特定口座年間取引報告書など、特定口座と確定申告の関係を中心に解説します。
特定口座とは?
特定口座とは、証券会社などの金融商品取引業者などで開設できる口座であり、一般口座と違って簡易的な確定申告や納税ができるというメリットがあります。
売却益については原則として翌年に確定申告を行う必要がありますが、特定口座の場合は確定申告が不要になることがありますし、必要な場合でも証券会社から送付される年間取引報告書を添付することで簡単に確定申告を実施することが可能です。
証券会社ごとに1人1口座しかつくることができないものであり、1度譲渡取引などをおこなうとその年の途中で内容を変更できないので注意が必要です。口座にはいくつかの種類があるので、納得できる選択をするためにはそれぞれの特徴まで知っておく必要があるでしょう。
特定口座には4種類ある
特定口座の種類を4つ順番に解説します。
源泉徴収ありの特定口座
特定口座には「源泉あり」の特定口座があり、正式名称は源泉徴収選択口座となっています。多くの人が選択するものであり、これを選んでおくことによって証券会社で売却損益や税金の計算を行ってもらうことが可能です。
税金を売却代金から差し引いてもらうことが可能であるため、確定申告は不要となり非常に便利だと言えます。ただし、一部口座で損失が出たケースなど、年間を総合的に見て売却損だった場合は通算するために確定申告をするほうがお得になりやすいと知っておきましょう。
源泉徴収なしの特定口座
「源泉徴収なし」の特定口座は簡易申告口座とも呼ばれ、証券会社で売却損益の計算はしてもらうことができますが、税金の計算や納税を行ってもらうことはできません。
年間を総合的に見たときに売却益だった場合は、原則として確定申告が必要になることを理解しておくべきです。損失が出ている場合は申告しないという選択をすることもできますが、後々のことを考えると申告したほうがお得になるケースが多いことも知っておくと良いです。
NISA口座
NISA口座はNISA(少額投資非課税制度)が利用できる口座であり、これを利用すると投資による利益が一定期間非課税となります。
損失が出てしまっても他の口座と損益通算や繰越控除ができないという特徴がありますが、非課税という恩恵が受けられることを知っておくと良いです。
原則として確定申告を行う必要はありませんが、他に収入がない人の場合であれば、年間の利益が38万円以下で申告を行うと還付を受けることができます。
NISAは確定申告が原則不要!理由や注意点について徹底解説!
この記事では、NISAの売却益や配当金の確定申告が原則不要となっている理由を解説しました。一方で、株式数比例分配方式以外で配当金を受け取る場合など、確定申告が必要なケースも紹介しています。NISAを運用するときの注意点も解説したので、ぜひ参考にしてください。
一般口座
一般口座は特定口座やNISA口座で管理していない株式を管理するものであり、損益計算から確定申告まで自分自身で行うことが大きな特徴です。
複数開設している場合は、それぞれ計算を行わなければなりません。未公開株はこの口座でしか利用できないことを知っておきましょう。
以前はみなし取得費の特例を使うことができるというメリットがありましたが、特例が廃止されてしまったため、未公開株を利用したい人以外で新規開設するメリットはほとんどないです。
源泉徴収ありの特定口座のメリット・デメリットとは?
源泉徴収ありの特定口座のメリット・デメリットを順番に解説します。
源泉徴収ありの特定口座のメリット
- 上場株式等の譲渡益について証券会社による源泉徴収のみで課税関係を終了することが可能
- 売却の都度、損益計算が行われ所得税・住民税が源泉徴収または還付される
- 「源泉徴収ありの特定口座」内の譲渡益は配偶者控除や扶養控除等の適用の有無を判定する際の配偶者等の合計所得金額に含めなくてもよい(確定申告をすると合計所得金額に含まれる)
- 源泉徴収あり・なしにかかわらず特定口座内の譲渡損益は証券会社から発行される「年間取引報告書」を使って簡易な手続きで確定申告をすることが可能
- 「源泉徴収ありの特定口座」に受け入れた配当等と譲渡損失が自動的に損益通算され、これらの所得に係る税金を証券会社が納付または還付する
源泉徴収ありの特定口座を利用するメリットはたくさんあります。その中でも、確定申告が基本的に不要とされていること、必要な場合でも証券会社から発行される書類を使って簡単に申請できることが大きな魅力です。確定申告なしでも、譲渡所得が配偶者控除などの所得基準に合算されないことも嬉しいポイントだと言えます。
源泉徴収ありの特定口座のデメリット
確定申告をしなければ「損失の繰越控除」は利用できません。給与所得者に関しては以下のような場合、所得税の確定申告をおこなわなくてよいとされていますが「源泉徴収ありの特定口座」の譲渡益については一律に源泉徴収されます。※
※勤務先での年末調整で納税が完了する給与所得者で、給与収入2,000万円以下かつ給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円以下の場合、また、公的年金等による年間の収入金額が400万円以下である年金受給者で、その年金以外の所得の合計額が20万円以下の場合、所得税について確定申告義務がないため、結果的に当該20万円以下の所得については所得税を納めずに済みますが、それを理由に「源泉徴収ありの特定口座」で源泉徴収された所得税の還付等の申告はできません。
給与所得者や年金所得者は年間20万円以下の利益を申告・納税する必要がないです。ですが、源泉あり特定口座を選ぶと自動的に税金が差し引かれてしまうので、他の口座であれば支払う必要がなかった税金を支払う可能性があると知っておきましょう。
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源泉徴収なしの特定口座のメリット・デメリットとは?
次に、源泉徴収なしの特定口座のメリット・デメリットを順番に解説します。
源泉徴収なしの特定口座のメリット
- 源泉徴収ありなしにかかわらず特定口座内の譲渡損益は証券会社から発行される「年間取引報告書」を使って簡易な手続きで確定申告をすることが可能
- 源泉徴収ありなしにかかわらず各種特例の適用や確定申告による複数口座間の損益通算なども可能
源泉徴収なしの特定口座を選んでいても、年間取引報告書を使えば簡単に確定申告が行えます。確定申告を行う場合には各種特例を利用できますし、複数口座間の損益通算も可能です。納税しなくても良い税金が差し引かれない点もメリットだと言えます。
源泉徴収なしの特定口座のデメリット
- 「源泉徴収なしの特定口座」の譲渡益は配偶者控除や扶養控除等の適用の有無を判定する際の合計所得金額に含まれる
源泉徴収なし特定口座を利用すると、源泉徴収ありの場合と違っていくつかの控除の適用を判定するための合計所得金額に譲渡益が含まれてしまうというデメリットがあります。控除判定で不利になりたくない場合は源泉徴収ありがおすすめです。
特定口座の源泉徴収ありなしはどうやって選んだ方がいい?
ここでは、特定口座の源泉徴収ありなしの選び方を紹介します。
源泉徴収なしの特定口座は投資家向け
特定口座をどのように選ぶべきか迷っている人もいるかもしれませんが、源泉徴収なしは本格的な投資家向けだと言えます。
自分で確定申告する必要があるものの、源泉ありのように不要な税金を取られることはありません。税金が差し引かれないのでその分を再投資に回すことができ、効率的に投資活動を行うことが可能です。
本格的に投資家として活動したい場合は、手元にお金が残りやすい源泉徴収なしの特定口座が便利だと言えます。
源泉徴収なしでも損益計算の作業は省くことが可能
源泉徴収なしを選択する場合でも、特定口座年間取引報告書が送られてくるため、損益計算の手間を省けます。
特定口座の年間取引報告書とは?
特定口座の年間取引報告書について知っておくべき基礎知識を解説します。
特定口座年間取引報告書の見方・書き方
「特定口座年間取引報告書」は、特定口座内の年間の損益や配当金、それに対する源泉徴収税額が書かれています。「源泉徴収税額」には所得税と住民税の源泉徴収税額が書かれており、「譲渡の対価の額」には、収入金額の1年のトータル額が記載されているはずです。
「取得費及び譲渡に要した費用の額等」は、証券会社で計算した取得価額などの1年の総合的な金額が書かれます。
「差引金額」には年間の譲渡損益が記載されますが、損失の場合は金額の前にマイナスがついていることを知っておきましょう。記載されている入手金額や損益の金額は、そのまま転記することで確定申告書を作成する際に使うことができるので、年間取引報告書はとても便利なものです。
損失が出た場合は「譲渡損失の繰越控除」
譲渡損失が出た場合は「譲渡損失の繰越控除」が利用でき、損失額を翌年以降3年間持ち越すことが可能です。確定申告を行うことで、これを実施できます。
特定口座で確定申告が必要は場合は?
特定口座で確定申告が必要は場合を、口座の種類ごとに解説します。
NISA口座
NISA口座は原則申告が不要となっていますが、収入がなくて利益が38万円以下であれば申告して還付金を受け取ることがおすすめです。
源泉徴収あり
源泉徴収ありの場合は確定申告不要ですが、一部口座で損失があり、還付が受けられる場合は申告をすることをおすすめします。
源泉徴収なし
利益と損失のどちらの場合でも、確定申告が必要となるので、必ず申告しなければならないと覚えておきましょう。
よくある質問
最後に、よくある質問と回答をまとめました。
特定口座(源泉徴収あり)で確定申告は必要?
特定口座で源泉徴収ありを選んでいる場合、通常は確定申告をする必要がありません。しかし、例外的に確定申告が必要になる場合があります。それは、取引で生じた損失を次の3年間にわたって繰り越したいときや、他の証券会社の口座で得た株式の配当金や売却による損益を自分の取引の損益と合算したい場合です。
特定口座の配当のみを確定申告することは可能?
特定口座(源泉徴収あり)での取引では、譲渡所得や配当所得の申告を口座単位で選択できます。ただし、取引や配当ごとに選択することは不可能です。
また、特定口座(源泉徴収あり)で得た譲渡所得の利益や配当所得のいずれかのみを申告することも可能です。しかし、譲渡損失を申告する場合は、同じ口座で得た配当所得も一緒に申告する必要があります。
まとめ
この記事では、特定口座や一般口座などの特徴やメリット・デメリットについて詳しく紹介しました。このように、選ぶものによって確定申告の必要性や確定申告を簡単に実施できるかどうかが大きく違ってきます。いい加減に選んでしまうと、確定申告の時期になってから大変な思いをするはずです。それぞれのメリットやデメリットを踏まえ、自分に合った口座を開設することが大切だと言えます。
多くの人は源泉徴収ありを選択しますが、本格的に投資家として活動するための口座がほしい場合などは話が違ってくるでしょう。状況や目的ごとに開設するべきものは異なっているため、紹介した情報を参考にして、正しく選べるようにしておくべきだと言えます。
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