運転資金の計算方法は?資金の目安や調達方法についても詳しく解説!

この記事では、運転資金の定義や計算方法、目安について詳しく紹介します。また、必要な運転資金を確保するために重要とされる、資金繰りを安定させる方法や資金調達の方法についても説明していますので、ぜひ最後までご覧になってください。

この記事では、運転資金の定義や計算方法、目安について詳しく紹介します。また、必要な運転資金を確保するために重要とされる、資金繰りを安定させる方法や資金調達の方法についても説明していますので、ぜひ最後までご覧になってください。

運転資金とは

運転資金とは、掛け取引による入金と支払いのタイムラグに備えて必要となる資金のことです。

企業間の取引においては、商品を販売した時の代金を、決められた期日までに後払いで精算する方法である「掛け取引」が一般的です。

この掛け取引により販売代金の「回収」が商品仕入代金の「支払い」よりも後になることがあります。そのため、販売代金が入金されるまでの間に発生する債務の支払いに対して、あらかじめ手元資金を用意しておく必要があり、この資金のことを運転資金といいます。

経営者と金融機関による運転資金の認識の違い

インターネット上の情報や経営者のなかには、運転資金の認識を勘違いしていることが非常に多く、人件費やオフィスや店舗の家賃、通信費、水道光熱費など、事業を運営する上で発生する「すべて」の費用をまかなうために必要な資金を運転資金と捉えていることがあります。

一方、金融機関では、上で説明したような仕入費用の支払いと商品の販売代金の回収までの間に必要となる資金を運転資金と認識しています。

この運転資金の捉え方の違いは、金融機関の融資を利用する際に大きな影響を及ぼします。もし、経営者が会社の運営上必要な費用を運転資金として把握しており、運転資金の融資を申請した場合、金融機関側の立場からすると必要以上に多額の融資を希望していると判断でき、融資の審査において不利になってしまうのです。

そのため、融資を検討している場合には、運転資金の認識を誤らないよう注意しましょう。

運転資金の種類

単に運転資金といっても、その種類は多岐にわたり、以下の4種類があります。

  • 経常運転資金

経常運転資金とは、事業を継続的に運営する上で、掛取引による入金と支払いのタイムラグに備えるための資金であり、正味営業運転資金、所要運転資金とも呼ばれます。一般的に「運転資金」という言葉を使う場合には、経常運転資金のことを指します。

  • 増加運転資金

増加運転資金とは、売上高の増加に伴って必要になる資金のことであり、売上拡大時に必要な資金と通常時に必要な運転資金の差額が増加運転資金にあたります。売上が増加すると仕入や在庫が増えたり、売掛金が増加するため、その分資金繰りが圧迫されやすくなります。売上が増加すると、より多くの資金を手元に用意しておく必要があるのです。

  • 減少運転資金

減少運転資金とは、事業不振により売上が減少した際に一時的に必要となる資金を指します。大抵、売上が低迷した際に仕入量を減らすタイミングは、売上が減少した月の翌月以降となります。この売上が減少してから仕入量を調整するまでのタイムラグが一時的にキャッシュフローに影響を与え、必要となる資金が増加するのです。

  • 季節性運転資金

季節性運転資金とは、言葉の通り決まった季節に必要となる資金のことを指します。例えば、クリスマスや年末年始に期間限定商品を販売する場合、一時的に仕入費用や販売費用、が追加で必要となり、通常のキャッシュフローに影響を与えます。そのため、増加運転資金や減少運転資金と同様に、手元に用意しておかなければならない資金が増えるのです。

設備資金との違い

企業のお金は、運転資金と設備資金の2つに分けられます。運転資金は、継続的に事業を運営させるために必要な資金であり、設備資金は主に事業を拡大する際に必要となる資金のことを指します。

設備資金の具体例としては、設備や車両運搬具の購入費用、事業所や店舗の増改築にかかる費用、HPやECサイトの制作費用などが該当します。

運転資金の計算方法と目安

資金繰り計画を立てる際には、必要な運転資金の計算が必要となります。資金繰りを安定させるためにも、事前に必要資金を計算し準備しておくことが大切です。

ここでは、運転資金を求める計算方法と必要な運転資金の目安について説明します。

運転資金の計算式

最低限必要となる運転資金は、事業における売上債権、在庫(棚卸資産)、仕入債務を元に計算します。

計算式とそれぞれの項目の内容については以下の通りです。

運転資金 = 売上債権 + 在庫(棚卸資産)- 仕入債務

  • 売上債権:売掛金や受取手形の合計額
  • 在庫(棚卸資産):保有している商品や原材料、仕掛品(製造途中の製品)
  • 仕入債務:買掛金や支払手形の合計額

 

実際に以下の2つの例を参考に必要な運転資金を計算してみましょう。

  1. 売上債権が600万円、在庫が300万円、仕入債務が400万円の場合
  2. 売上債権が1,500万円、在庫が750万円、仕入債務が1,000万円の場合

運転資金の計算式に当てはめると、それぞれの必要な運転資金は以下のとおりになります。

  1. 600万円 + 300万円 - 400万円 = 500万円
  2. 1,500万円 + 750万円 - 1,000万円 = 1,250万円

上記からわかるように、取引の規模・取引数が拡大するほど、必要な運転資金が増加することがわかります。

必要な運転資金の目安

運転資金の目安は、業種や事業規模によって異なりますが、一般的には3~6か月分の資金を確保することが望ましいとされています。

飲食業やスーパーマーケットのような一般消費者が顧客となる業種については、商品の販売・サービスの提供と同時に代金を受け取ることができるため、手元に用意しておく運転資金は少額で済みます。

一方、卸売業や不動産開発業など、代金の入金までに数ヶ月以上の期間を要す取引が多い業種においては、半年から1年以上分の運転資金を用意しておいた方がよいでしょう。

ただし、いずれのケースにおいても、売掛金の入金が遅れたり、売掛債権の貸し倒れなどのリスクがあるため、必要な運転資金を求める計算式で算出できる額よりも余分に資金を用意しておく必要があります。そのため、3~6か月分が運転資金として必要な額の目安とされているのです。

資金繰りを安定させる方法

必要な運転資金の確保には、資金繰りを安定させることが重要です。決算書上では収益が上がっていたとしても、支払いや入金のタイミングのずれによって手元資金が不足してしまえば、最悪の場合、黒字倒産に陥ってしまいます。

そのため、会社を運営する上では、収益を立てるのと同時に資金繰りも安定させる必要があるのです。

以下では、資金繰りを安定させるために効果的な方法を4つ紹介します。

売上債権回収サイトを短縮する

売上債権回収サイトとは、売上が発生してから代金を回収するまでの期間のことを指します。売上債権回収サイトが長いと、入金されるまでに支払いの期日がいくつもきてしまうため、資金繰り悪化の原因となります。

まずは、取引先ごとに売掛金の支払期日を確認し、回収サイトが長い場合は条件の見直しを提案しましょう。一部代金の前払いや分割払いも選択肢として提案し、いずれにも応じてもらえない場合には、取引先の資金繰りや経営に問題がある可能性もあるため、取引先変更も検討すべきです。

また、新規の取引先に対しては、なるべく売掛金を早期に回収できるよう、契約時に交渉するとよいでしょう。取引金額が大きい場合などは、追加で一部代金の前払い、分割払い、限度額の設定など、少額ずつであっても早期回収を促す対策を講じることが効果的です。

資金調達を実施する

資金繰りが厳しい場合は、資金調達を検討することが必要です。

金融機関からの融資やビジネスローン、補助金や助成金など、さまざまな方法で運転資金を調達可能です。これらの方法についての詳しい特徴については後の項目で取り上げます。

資金調達を検討する際は、必要な資金の額やタイミングによって適切な方法が異なるため、それぞれの特徴を事前に把握しておくことが重要です。

資金調達にはどんな種類がある?それぞれのメリット・デメリットを解説

資金調達にはどんな種類がある?それぞれのメリット・デメリットを解説

資金調達は創業時だけでなく、継続的に事業を運営したり発展させるためにも必要です。 資金調達にはさまざまな方法がありますが、各自の状況に応じてどの方法が適しているか判断するのが難しい場合も多いでしょう。 本記事では、資金調達の種類や適している活用場面について詳しく解説します。資金調達を検討している人はぜひ参考にしてみてください。

不要な経費を削減する

資金繰りの安定を図るためには、不要な経費を削減することも効果的です。具体的には、電気代や通信費などの固定費の見直しや、ペーパーレス化の推進による印刷代や用紙代、インク代を削減するなどの方法があるでしょう。

また、近年では、リモートワークやWeb会議の導入により、結果として交通費や出張費の削減に至っているケースも増加しています。

他にも以下のような方法で経費を削減することが可能です。

  • 広告費の見直し
  • 消耗品の一括大量購入によるコスト削減
  • レンタルやリースの活用
  • 法人カードの発行による振込手数料の削減
  • アウトソーシングの活用による残業代の削減
  • 遊休資産の売却による維持コスト削減

まずは、損益計算書を活用して会社全体の経費や現状を正確に把握し、社内で協力体制を整えたうえで、事業運営に支障をきたさない範囲から経費削減に取り組むことが重要です。

適正在庫を保つ

適正在庫の維持は、運転資金の効率的な管理に直結します。過剰な在庫は無駄な管理費用や処分コストを生む一方、在庫不足は売上機会の損失を招きます。

そのため、販売計画に基づいて適切な在庫量を判断し、過剰な在庫や在庫不足の状況を防ぎましょう。定期的な棚卸しや在庫管理システムの導入をすると、実際の在庫量と理想的な在庫量の差異を明確に把握でき、在庫の適切な管理がしやすくなるでしょう。

以上が資金繰りを安定させるためにできる代表的な方法です。ここで紹介した資金繰りを安定させる方法については、あくまで一例に過ぎません。詳しい内容や他の方法について知りたい方は以下の記事を参照してみてください。

資金繰りを改善させる8つの方法を解説!悪化する原因についても紹介

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運転資金の主な調達方法

追加投資によって事業を拡大させるのみならず、事業の継続に必要な運転資金を確保する場合にも資金調達は活用されます。

以下では、運転資金を調達する方法を4つ紹介します。それぞれの特徴や実施するのに向いているケースを説明するので、ぜひ参考にしてみてください。

金融機関からの融資

金融機関からの融資は、運転資金を確保する最も一般的な方法です。厳しい審査に通過する必要がありますが、借り入れのなかでは金利が低めに設定される傾向にあり、多額の資金を調達しやすいのが特徴です。

審査期間には、最低でも2週間程度、通常は3週間から1ヶ月半程度の時間を要すため、金融機関からの融資は、事前にまとまった金額を用意しておきたい場合に向いています。

融資の中には、銀行が100%の貸し倒れリスクを負担するプロパー融資と、信用保証協会が返済の保証をする保証付き融資があります。

金融機関のリスクが大きいプロパー融資は、財務基盤が安定している大企業や業績が好調な中堅企業など信用度の高い企業のみしか受けられず、一般的な中小企業やベンチャー企業、小規模事業者などは保証付き融資を利用することになります。

ビジネスローン

ビジネスローンは、資金調達のスピードを重視する場合に適した選択肢です。通常、金融機関からの融資よりも審査基準が低めに設定されており、最短即日で資金を調達できるケースもあります。

一方、融資よりも金利が10%程度高く設定されており、借り入れできる金額も最大で1,000万円程度であることから、売上債権を回収するまでに時間がかかり、長期的な運転資金が必要となる場合や、多額の資金を調達したい場合には向いていません。

急に資金を調達しなければなくなった場合を除き、なるべくビジネスローンの利用を避けるようにしましょう。万一、利用が必要な場合には、返済計画をしっかりと立て、無理のない範囲で借り入れることが重要です。

資金調達手段としてのビジネスローンのメリットは?融資との違いや利用時の注意点を解説

資金調達手段としてのビジネスローンのメリットは?融資との違いや利用時の注意点を解説

銀行融資が最も一般的な資金調達の方法ですが、急ぎで資金が必要な場合や、融資の審査に通過することが難しい場合には、ビジネスローンの利用も選択肢となるでしょう。ビジネスローンは、資金を調達できるまでの時間が短く、比較的借り入れやすい方法ではありますが、利用時の注意点など、知っておくべきことも多いのです。本記事では、ビジネスローンのメリット・デメリットや手続きの流れ、利用時の注意点を詳しく解説します。資金調達を検討している方はぜひ参考にしてみてください。

補助金・助成金

国や地方自治体、民間団体が給付している補助金・助成金も、運転資金の調達手段として挙げられます。

補助金・助成金の最大のメリットは、返済が不要なことです。その分、厳格な審査や複雑な手続きを経る必要がありますが、事前準備や正確な書類作成により十分に受給可能なため、積極的に活用するべきでしょう。

ただし、補助金・助成金で受給できる金額は、数十万円から数百万円までとなっていることが多いため、巨額の資金調達には向いていません。

また、申請から受給までに数ヶ月から半年程度の時間がかかるため、すぐに資金を用意しなければならない場合にも適さないでしょう。

ファクタリング

ファクタリングとは、売掛債権を業者に買い取ってもらうことによって、支払い期日よりも前に現金化する資金調達方法です。

買い取りには手数料が発生しますが、ビジネスローンと同様に、資金を確保できるまでの期間が短いため、迅速に運転資金を調達する必要がある場合に利用されるケースが多いです。

ファクタリングでは、業者に買い取ってもらった債権が貸し倒れたとしても、買い取り後は責任を負う必要がありません。ただし、債権を売却する際に信用度の低いものであれば、手数料が高額となったり、買い取りに応じてもらえない可能性があるため注意です。。

また、ファクタリング業者には悪徳な業者が存在し、金融庁からの注意喚起が出されています。そのため、利用時の業者選びは慎重に行うようにしましょう。

まとめ

運転資金とは、掛け取引による入金と支払いのタイムラグに備えて手元に準備しておくことが必要な資金であり、「売掛債権 + 在庫 − 仕入債務」によって計算できます。

仕入費用や販売費用に加え、人件費や広告宣伝費、事業所の家賃なども含めた、事業にかかわるすべての費用をまかなうために必要な資金を運転資金と間違って捉えてしまっている人も多いですが、融資の審査においては非常に不利になるため注意しましょう。

また、企業の成長には積極的な投資が必要ですが、事業を安定させて運営するには、日頃から余裕をもって運転資金を準備しておくべきです。

ただし、どれくらい用意しておくべきかや、どのように資金を確保するのがよいか迷ったりするなど、運転資金についてお悩みを抱えることもあるかと思います。

そのような場合には、税理士などの資金繰りの専門家に相談すれば、各企業に適した的確なアドバイスが受けられるでしょう。

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