資金繰りを改善させる8つの方法を解説!悪化する原因についても紹介

会社を経営する上で、資金繰りは欠かせない要素です。創業から間もないスタートアップやベンチャー企業、中小企業などは資金繰りが課題となることが多いでしょう。 資金繰りを改善するには、まず企業のお金の流れを把握し、悪化している原因を特定することが重要です。 そこで本記事では、資金繰りが悪化する主な原因を紹介し、8つの改善方法について詳しく説明します。

会社を経営する上で、資金繰りは欠かせない要素です。創業から間もないスタートアップやベンチャー企業、中小企業などは資金繰りが課題となることが多いでしょう。

資金繰りを改善するには、まず企業のお金の流れを把握し、悪化している原因を特定することが重要です。

そこで本記事では、資金繰りが悪化する主な原因を紹介し、8つの改善方法について詳しく説明します。

資金繰りの重要性

資金繰りとは、会社や事業の収入と支出を管理し、現金収支の過不足を調整することであり、企業経営における最も重要な課題の一つです。

資金とは会社がすぐに使えるお金を指し、現金や普通預金、当座預金などが該当します。定期預金や貸付金、売掛金、不動産など、すぐに現金化できないものについては資金とは言えません。

いくら売上が伸びていたとしても、タイムリーに使える資金が手元にないと、買掛金や給与、税金など各方面への支払いが滞り、経営が困難になり、最悪の場合、黒字倒産を招いてしまうことがあります。

つまり、会社を存続させるためには、資金繰りによる現金収支のバランスが重要なのです。また、スタートアップや成長期の企業にとっては、資金を計画的に管理することが事業の成功や拡大にも直結すると言えるでしょう。適切に資金管理をすることで、支払いのリスクを減らし、長期的な健全な経営基盤を築くことが可能です。

運転資金の計算方法は?資金の目安や調達方法についても詳しく解説!

運転資金の計算方法は?資金の目安や調達方法についても詳しく解説!

この記事では、運転資金の定義や計算方法、目安について詳しく紹介します。また、必要な運転資金を確保するために重要とされる、資金繰りを安定させる方法や資金調達の方法についても説明していますので、ぜひ最後までご覧になってください。

資金繰りが悪化する原因

資金繰りが悪化する要因はいくつか存在します。これらを把握し、事前に改善策を講じることが企業経営の安定に繋がるでしょう。

赤字経営の継続

資金繰りが悪化する原因の一つに、赤字経営が継続していることが挙げられます。設備投資や節税対策によって、一時的にマイナス収支になる場合には資金不足となる可能性が低いため問題ありません。しかし、長期にわたって赤字経営が続くと、売上があっても利益が確保できず、手元に資金が残らないため資金繰りが徐々に悪化します。

長期間の赤字経営は、手元資金の枯渇によって仕入れや毎月の固定費の支払いに影響が出てしまう上、金融機関からの信頼も損なわれ、融資にも影響が出てしまうため、早急に脱却する必要があるでしょう。

そのため、まずは赤字事業の縮小・撤退や採算が取れない取引の停止、経費の見直しによって黒字化できないかを検討するとよいでしょう。

売掛金の回収の遅延

取引先が資金不足や業績不振に陥った場合、売掛金の回収が遅延することもあります。そのため、売掛金が指定日に入金されることを想定し、手元資金に余裕を持たせず資金計画を組んでいる場合にも注意が必要です。

特に大口の取引先からの売掛金の入金が遅れれば、当初は問題ないと予測していた仕入債務や経費の支払いが滞ってしまい、取引先に迷惑をかけてしまうでしょう。

また、売掛金は取引先の経営悪化や倒産によって貸倒れする可能性もあります。その場合、商品やサービスを提供したにもかかわらず、代金を回収できずにコストのみを負担することとなるため、資金繰りに深刻な影響を及ぼします。最悪の場合、連鎖倒産を引き起こしてしまうかもしれません。

そのため、商品やサービスの提供時に掛け取引を行う場合には、可能な限り入金の時期を早めにしてもらえるよう取引先に交渉したり、長期的に取引を行っている企業に対しても常に与信管理を行うことが重要です。

急激な売上の増加・減少

急激に売上が減少した場合に資金繰りが悪化することは容易に想像できると思います。取引先の経営事情や世の中の経済情勢によって、否応無しに売上が減少してしまったとしても、人件費や福利厚生費、オフィスや店舗の家賃・光熱費については毎月固定で支払わなければなりません。外的要因によって売上が減少している場合には、経費を削減する、不要な資産を売却するなどして、十分な手元資金を確保しておく必要があるでしょう。

一方、売上が急激に増加した場合にも、資金繰りを悪化させる可能性があります。売上が上昇すると、その分、仕入れや設備投資、業務量の増加も伴うため、当然ながら仕入コストや人件費などの支出も増加します。特に、掛け取引が多い卸売業、製造業、建設業などでは、売掛金の入金が数ヶ月先になってしまうケースも多く、先に発生する仕入れや人件費の支払いが資金繰りを圧迫するリスクがあります。

そのため、新規の大口の取引先には、代金の一部を前受金として支払ってもらったり、仕入れ先の業者に仕入れ代金や支払い期日の見直しをしてもらえるよう交渉するなど、資金繰りの悪化を招かないよう事前に対策を講じるとよいでしょう。

資金繰りの管理が不十分

普段から入念に資金管理ができていない場合、急な出費や未収金の回収遅延に対応できず、資金繰りが悪化することがあります。

特に、本業で忙しいスモールビジネスの事業者などは、詳細な財務状況の把握まで手が回っていないことも多いでしょう。年間や月間の売上や利益は意識していても、キャッシュフローまで把握できていなければ、決算書上では黒字であっても、気づいたら手元に資金が全く残っていないという可能性も大いにあります。

そのため、資金繰り表を作成し、定期的に資金繰り計画を見直すことが、財務の健全性を維持するために不可欠です。

過剰な在庫保有

計画的に商品を仕入れていたとしても、予定通りに販売できず在庫を過剰に抱えてしまう場合もあるでしょう。

過剰な在庫保有は、在庫の保有コストや不良在庫の発生による処分にかかるコストの増加を招くため、資金繰りを悪化させる要因となります。

そのため、定期的に棚卸しを行い、在庫量に応じて仕入量を調整するなどして、適正在庫を保つようにしましょう。

資金繰りを改善させる方法

ここでは、資金繰りを改善する方法を8つ紹介します。資金繰りの悪化を予防するためにも効果的な方法も取り上げているので、資金繰りに余裕がある場合でも参考になる情報がある
かもしれません。

資金繰り表の作成

資金繰り表とは、一定期間における現金の収入や支出を記録した管理表のことであり、過去の営業実績をもとに作成する「実績資金繰り表」と経営計画から作成する「予定資金繰り表」の2つの形式があります。

この2つの資金繰り表を作成するメリットは、今後の収入と支出の予定を見える化し、資金の不足が予測される時期を事前に把握できることです。また、資金不足の原因についても特定しやすくなり、具体的な対処法を講じるのにも役立ちます。

常に手元にある運転資金の額を確認し、最低でも1ヶ月分、理想としては3ヶ月分程度の資金が手元にある状態を維持するとよいでしょう。

資金繰り表については、特に決まった形式はなく、Excelやノートで作成可能です。インターネット上に無料で公開されているExcelの資金繰り表が複数あるので、使いやすいフォーマットをダウンロードして活用するとよいでしょう。

経費の削減

資金繰りの悪化を改善するためにも、不要な経費を洗い出して削減することも効果的です。経費削減の代表例としては、第一に社内業務のペーパーレス化が挙げられます。

例えば、伝票や帳票の会計処理や会議で使用する書類や各申請書などをデジタル化することで、これまでかかっていた用紙代やインク代、印刷代を削減できます。加えて、印刷にかかっていた手間や書類の配布作業も削減できるため、業務効率化にも効果的です。

また、テレワークやWeb会議を積極的に取り入れることで、交通費や出張費を削減する方法も効果的でしょう。近年では、リモートワークの定着により、オフィスのサイズを最低限に縮小し、賃料を削減する企業も増えています。

上記の方法以外にも、以下のような方法で経費を削減できる可能性があるでしょう。

  • 広告費の見直し
  • 消耗品の一括大量購入によるコスト削減
  • レンタルやリースの活用
  • 法人カードの発行による振込手数料の削減
  • アウトソーシングの活用による残業代の削減
  • 接待交際費の削減

ただし、安易に経費を削減すると、従業員の反感や顧客離れにつながりうるため、十分に注意する必要があります。まずは、損益計算書などを活用しながら会社全体でかかっている経費や現状を把握し、社内の協力体制を整備した上で、事業の運営に影響が少ない経費から削減するとよいでしょう。

売上債権回収サイトの短縮

いくら支出を削減できたとしても、お金が入ってくるまでに長い時間を要するようでは資金繰りは改善しません。

まずは、売掛先ごとに売掛金の支払期日を確認し、売上債権回収サイトが長い取引先には条件の見直しを提案するとよいでしょう。売上債権を計上してから入金されるまでの期間を指します。応じてもらえない場合には、取引先の資金繰りに問題がある、経営不振である可能性もあるため、取引先の変更も視野に入れる必要があります。

また、新規の取引先については、売掛金をなるべく早めに回収できるよう、契約時に取引条件について交渉するとよいです。加えて、取引金額が大きい場合や、取引先の経営状況に不安がある場合は、代金の一部を前払いしてもらう、分割で定期的に支払いをしてもらう、売掛金額に限度額を設けるなど、少額でも早期に売掛債権を回収できる対策を検討しましょう。

自社が設定している売上債権回収サイトが適正かわからない場合には、「売上債権回転期間」という指標を用いて判断できます。売上債権回転期間とは、売上高に対する売上債権の割合のことで、会社の売上債権がどれくらいの期間で回収できるかを計る指標です。この指標では、期間が短い(=数字が小さい)ほど資金繰りの健全性が高いとされます。

実際にこの指標を活用する際には、何日・何ヶ月で売上債権を回収できるかを示す「売上債権日数」「売上債権回転月数」で表されることが多いです。

それぞれの計算式については以下の通りです。

  • 売上債権回転日数 = 売上債権の金額 ÷ (売上高 ÷ 365日)
  • 売上債権回転月数 = 1,000万円 ÷ (8,000万円 ÷ 12ヶ月)

※売上債権には、売掛金以外にも受取手形、未収入金も含まれます。

例えば、ある企業が2024年3月期時点で売上債権が1,000万円分あり、3月期までの1年間(2023年4月から2024年3月)で売上高が8,000万円あったとします。この場合の売上債権回転日数・売上債権回転月数はそれぞれ以下の通りです。

・売上債権回転日数 = 1,000万円 ÷ (8,000万円 ÷ 365日)= 45.63日
・売上債権回転月数 = 1,000万円 ÷ (8,000万円 ÷ 12ヶ月)= 1.5ヶ月

一般的に、売上債権回転日数が60日(月数では2ヶ月)を超えると企業の負担が大きくなると言われています。中小企業の場合は、売上債権回転日数を30日以内にすることが望ましいでしょう。

ただし、製造業や卸売業など、取引の相手が法人であることがほとんどである場合には、売上債権回転期間が長くなりがちです。このような業種では、無理に売上債権回収サイトを短縮すると取引先の負担が大きくなりやすいため、業界平均なども参考にしながら支払い期日を設定するとよいでしょう。

資金調達の実施

運転資金の不足が予測される場合、資金調達も視野に入れるとよいでしょう。一時的な資金不足により、金融機関から追加で融資を受けたり、補助金・助成金を申請したりすることはよくあることです。

一時的な資金不足を解消する資金調達手段としておすすめな方法は以下の4つが挙げられます。

  • 金融機関からの融資
  • 補助金・助成金の申請
  • ビジネスローンの活用
  • ファクタリングの利用

あらかじめ一時的な資金不足が予測できている場合には、金融機関の融資制度や補助金・助成金を活用するとよいでしょう。厳しい審査や複雑な手続きを経る必要があり、今すぐ資金が必要な場合には向いていませんが、他の資金調達手段よりも比較的デメリットが少ないためおすすめです。

短期間で資金を確保する必要がある場合には、ビジネスローンやファクタリングを利用するとよいでしょう。ビジネスローンとは、事業資金を借り入れるためのローンであり、金融機関の融資よりも審査基準が緩くなっています。ファクタリングとは、売掛債権を業者に買い取ってもらい、支払い期日よりも前に現金化する方法です。

どちらも最短即日で入金が可能と即効性のある資金調達方法です。しかし、ビジネスローンは融資と比べて金利が非常に高い傾向にあり、ファクタリングは手数料が発生し本来受け取れる収入よりも大幅に減少する可能性があるため、緊急時の資金調達以外にはなるべく使用を避けた方がよいでしょう。

他の資金調達の手段やそれぞれの方法の詳しい内容について知りたい場合には、以下の記事をご確認ください。

資金調達にはどんな種類がある?それぞれのメリット・デメリットを解説

資金調達にはどんな種類がある?それぞれのメリット・デメリットを解説

資金調達は創業時だけでなく、継続的に事業を運営したり発展させるためにも必要です。 資金調達にはさまざまな方法がありますが、各自の状況に応じてどの方法が適しているか判断するのが難しい場合も多いでしょう。 本記事では、資金調達の種類や適している活用場面について詳しく解説します。資金調達を検討している人はぜひ参考にしてみてください。

仮決算による中間申告

一般的に、前事業年度の法人税額が20万円、消費税の年税額が 48万円を超える場合には、当該事業年度に支払うべき税金の何割かを期中に納付する、中間申告を行う必要があります。

しかし、今期に入って売上が急激に減少したなど、上半期に業績が悪化した場合、仮決算を行うことで中間納税の金額を抑えることが可能です。仮決算とは、事業年度開始から6ヶ月間を1事業年度とみなして中間決算を行い、それに基づいて中間申告を行う方法を指します。

前年度の納税額がかなり大きい企業が大幅に業績が悪化した場合にこの方法は有効です。ただし、中小企業では軽減できる税額がそれほど大きくならないことが多く、事業年度の開始日から6か月の決算書や申告書、勘定科目内訳明細書などを作成しなければならないため、手間やコストを考慮すると他の手段を検討した方がよいでしょう。

借入金の返済条件の交渉

金融機関への毎月の返済が資金繰りを圧迫している場合、既存の借入金について金融機関と交渉し、毎月の返済額や返済期間を変更してもらう「リスケジュール」を検討するとよいでしょう。

この方法は、経営不振に陥った企業が返済を一定期間猶予してもらい、経営の立て直しを図る場合に活用されることが多いです。

銀行などの金融機関は、融資したお金を確実に回収するためにも、返済に時間的な猶予を与え何としても倒産による不良債権の発生・貸倒れを防止します。そのため、然るべき理由が存在している場合や、策定された経営改善計画から再建が見込まれる場合には、リスケに対応してもらえると考えられます。

融資のリスケジュールとは?交渉時のポイントやメリット・デメリットを紹介!

融資のリスケジュールとは?交渉時のポイントやメリット・デメリットを紹介!

企業を経営する上で、中小企業やベンチャー企業などは特に資金繰りが課題となることが多いでしょう。資金繰りが悪化すれば、借入金の返済も厳しい状況になってしまいます。 借入金の返済に困ったときは、金融機関に返済のリスケジュールを依頼することが可能です。リスケジュールの実行は資金繰りの改善に役立ちますが、追加融資が受けづらくなるなどのデメリットも生じるため、慎重に検討しなければなりません。 本記事では、リスケジュールの詳しい意味やメリット・デメリット、金融機関への交渉時のポイントを解説します。また、リスケ中に実施可能な資金調達方法についても紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。

得意先の与信管理

取引先の倒産による売掛債権の貸倒れは、資金繰りを大きく悪化させる原因となります。資金繰りの健全性を維持するためにも、取引先の信用状況は常時チェックし、リスクの高い取引を回避するようにしましょう。

しかし、取引先が公開企業でない場合には経営状況を確認することはなかなかに難しいです。そのような場合には、営業担当者や経理担当者が相互に協力しながら、得意先の状況の変化や入金状況について共有し、倒産の兆候を見落とさないようにすることが重要です。

適正な在庫管理

適正な在庫管理も、企業の資金繰りや経営の安定に直結する重要な要素です。先述したように、在庫が過剰になると保管にかかるコストが増加する上、保管期間が長くなると商品の劣化や廃棄のリスクも増大します。

そのため、まず販売計画に基づき適切な在庫量を見極め、過剰な仕入れを防ぎましょう。また、定期的な棚卸しや在庫管理システムの導入も効果的で、これにより実際の在庫量と理想的な在庫量の差異を明確に把握できます。さらに、不良在庫を発見した場合には、仕入コストを下回った価格であっても、できるだけ換金処分をするとよいです。

まとめ

資金繰りの悪化を防ぐためには、日常的な資金管理が欠かせません。悪化した場合に原因を特定するためにも、資金繰り表の作成は特に効果的です。

今回紹介した資金繰りの改善方法を参考に、2〜3ヶ月分の運転資金は手元に置いておけるよう、実践できるものは取り入れていくとよいでしょう。

また、資金繰り計画や改善方法について、さらに専門的なアドバイスをしたいという方は、税務・会計の専門家である税理士に相談することをおすすめします。過去の顧問経験や資金調達の実績を活かし、各企業のニーズに合わせた的確なサポートを提供してくれるため、頼れるパートナーとなるでしょう。

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