相次相続控除とは?適用要件や計算方法について詳しく解説!

相次相続控除とは10年以内に相次いで発生した相続が一定の要件を満たす場合に、相続税額から一定額を控除できる制度で、相続税の負担を軽減する目的で設けられています。今回は相次相続控除の適用要件や計算方法、注意点について詳しく解説します。

相次相続控除とは10年以内に相次いで発生した相続が一定の要件を満たす場合に、相続税額から一定額を控除できる制度で、相続税の負担を軽減する目的で設けられています。今回は相次相続控除の適用要件や計算方法、注意点について詳しく解説します。

相次相続控除とは

相次相続控除とは、一定の要件を満たす相次相続が発生した場合に適用される相続税の控除制度です。相次相続は一次相続から10年以内に二次相続が発生することを意味します。

相次相続が発生すると、1つの財産に対して短期間で2回課税されることになります。そのままでは同一財産に対する税負担が過重になってしまうため、前回の納付税額の一部を二次相続で控除するという仕組みです。

なお、相次相続と似ている言葉に「数次相続」があります。数次相続とは一次相続の遺産分割協議中に相続人が亡くなることで発生する相続です。相次相続は一次相続の申告および納付が完了した後に発生する相続であり、数次相続とは性質が異なります。

相次相続控除の適用要件

相次相続控除の適用を受けるには、以下3つの要件をすべて満たす必要があります。

一次相続から10年以内に二次相続が発生していること

相次相続控除の対象になるのは、一次相続から10年以内に二次相続が発生した場合のみです。
例えば二次相続の開始が2020年4月1日の場合、一次相続は2010年4月1日以降に開始している必要があります。もし一次相続の発生が2010年3月だった場合、前回の相続から10年以上過ぎてからの発生となるため控除の対象外です。

基準となるのはあくまでも一次相続が発生したタイミングです。申告期限や申告が完了した日ではない点にご注意ください。

一次相続時に相続税を納付していること

相次相続控除は一次相続時に被相続人が相続税を納付している場合のみ適用対象となります。例えば、以下のようなケースは一次相続での納付税額が0円のため、控除の適用を受けられません。

  • 遺産総額が相続税の基礎控除額以下であった
  • 控除や特例制度を適用した結果、税額が0円になった

相次相続控除は前回の相続で納めた税額の一部を控除する制度であるため、一次相続時に配偶者控除を適用し、二次相続の被相続者が相続税課されていなければ控除の対象外となります。

また、相続税が課されていた場合にも、延滞税や過少申告加算税、無申告加算税などは相次相続控除の対象には含まれません。

二次相続の法定相続人であること

相次相続控除の適用を受けられるのは二次相続の法定相続人のみです。したがって以下のようなケースに該当する人は適用を受けられません。

  • 遺贈によって財産を取得した第三者
  • 相続放棄をした人
  • 欠格や廃除により相続権を失った人

相次相続控除額の計算方法

次に、相次相続控除による控除額の計算方法を紹介します。

相続税の基本的な計算方法については以下の記事をご覧ください。

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相次相続控除額の計算式

相次相続控除額は以下の式を用いて求めます。

A × C /(B - A)× D/C × (10 - E)/10 =各相続人の控除額
※ C /(B - A)が100/100を超える場合は100/100とする

それぞれのアルファベットに当てはめる数値は以下の通りです。

  • A:今回の被相続人が前回の相続の際に課された相続税額
  • B:今回の被相続人が前回の相続で取得した純資産価額
  • C:今回の相続の純資産総額
  • D:控除を適用する人が取得した相続財産の価額
  • E:一次相続から二次相続までの期間 ※単位は年 1年未満は切り捨て

参照:国税庁公式サイト「No.4168 相次相続控除」

相次相続控除額の計算シミュレーション

相次相続控除額について、以下の例を用いてシミュレーションをします。

  • A 今回の被相続人が前回の相続の際に課された相続税額:2,000万円
  • B 今回の被相続人が前回の相続で取得した純資産価額:1億7,000万円
  • C 今回の相続の純資産総額:1億2,000万円
  • D 控除を適用する人が取得した相続財産の価額:3,000万円
  • E 一次相続から二次相続までの期間:4年7ヶ月→1年未満切り捨てのため4年

前項で紹介した式「A × C /(B - A)× D/C × (10 - E)/10 =各相続人の控除額」に各数字を当てはめると、結果は以下になります。

2,000万円 × 1億2,000万円 /(1億7,000万円 - 2,000万円)× 3,000万円 / 1億2,000万円 × (10 - 4)/ 10
=2,000万円 × 1億2,000万円 /1億5,000万円 × 3,000万円/1億2,000万円 × 6/10
=2,000万円 × 4/5 × 1/4 × 3/5
=240万円

したがって、今回のケースにおける相次相続控除額は240万円です。

なお、仮にEが7年8ヶ月(1年未満切り捨てで7年)だった場合、結果は以下のように変わります。

2,000万円 × 1億2,000万円 /(1億7,000万円 - 2,000万円)× 3,000万円/1億2,000万円 × (10 - 7)/10
=2,000万円 × 1億2,000万円 /1億5,000万円 × 3,000万円/1億2,000万円 × 3/10
=2,000万円 × 4/5 × 1/4 × 3/10
=120万円

このように一次相続と二次相続の間が長くなるほど控除額が少なくなる仕組みです。短期間で特定の財産に過重な税負担がかかるのを防ぐための制度であるため、期間が短い場合に控除額が大きくなるように計算式が設定されています。

相次相続控除の手続き方法

次に、相次相続控除の手続き方法を紹介します。

相次相続控除の必要書類

相次相続控除では相続税申告書の一般的な添付書類に加えて、申告書の第7表「相次相続控除額の計算書」の提出が必要です。前回の相続に関する情報や控除額の計算に用いた数字など、必要事項を記入していきましょう。

なお、必須とはされてませんが、一次相続における相続税申告書の写しも添付するのが望ましいとされています。

相次相続控除の手続きの時期と場所

相次相続控除の手続きの期限は相続税申告と同様、相続開始の翌日から10ヶ月以内、提出先は納税地を所轄する税務署です。申告書に必要書類を添付することで手続きが完了するイメージです。

相次相続控除の注意点5選

最後に、相次相続控除について押さえておくべき注意点を5つ紹介します。

相次相続控除によって相続税が0円になる場合は申告不要

相次相続控除の適用によって納付額が0円になる場合、相続税の申告は必要ありません。

相続税の控除制度の中には申告要件が定められているものが多く存在します。例えば配偶者控除や小規模宅地等の特例は、制度によって税額が0円になる場合も申告が必要です。

一方、相次相続控除には申告要件が定められていないため、税額が0円になった場合は申告不要となります。

ただし、相続開始から一定期間以内に相続財産を売却した場合に適用できる「取得費加算の特例」は、相続税申告をした場合のみ適用可能です。相続財産の売却予定があり、同特例を用いる可能性がある場合は申告をした方が良いでしょう。

遺産分割協議が成立していなくても申告可能

遺産分割協議が成立していない状態でも、相次相続控除を適用した相続税の申告が可能です。申告期限までに遺産分割協議が終わりそうにない場合は、法定相続分で相続したと仮定して控除額を計算することができます。

遺産分割協議が完了次第、必要に応じて修正申告や更正の請求を行いましょう。

被相続人の兄弟姉妹間の相続でも適用可能

相次相続控除は兄弟姉妹間の相続でも適用可能です。被相続人との関係性に関する定めはなく、前述した要件さえ満たせば適用を受けられます。

申告期限は5年以内

「控除の適用を受けられることを知らなかった」「控除額の計算を誤り、必要以上の税額を払ってしまった」
このような場合でも、申告期限から5年以内であれば更正の請求で相次相続控除の適用が可能です。

言い換えると、申告期限から5年が過ぎてしまうと控除の適用はできません。必要以上に納税してしまうことを避けるため、相次相続控除の適用対象になるか必ず確認しましょう。

期限後申告、修正申告、更正の請求においても適用可能

相次相続控除は期限後申告、修正申告、更正の請求においても適用可能です。何らかの事情により期限後に申告をする場合も控除の適用を忘れないよう注意しましょう。

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相次相続控除は短期間に相次いで発生した相続の税負担を軽減する制度

前回の相続から10年以内に相続が発生した場合、相次相続控除の適用を受けられる可能性があります。ただし、適用要件の判断基準や計算方法、注意点などが一見複雑であり、専門知識のない人が正確に対応するのは容易ではありません。

疑問や懸念がある状態で作業を進めようとすると、ミスや漏れのリスクが上がるだけでなく、精神的な負担が重くなる恐れもあります。相次相続控除についてお悩みがあれば、当事者のみで対応しようとせず、専門家である税理士にご相談ください。

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