相続時精算課税制度とは?改正での変更点・メリットを詳しく解説!

相続時精算課税制度は、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与に際して選択できる制度です。同制度を適用すると一定額まで贈与税がかからなくなりますが、贈与者の死亡時に相続税で精算することになります。今回は相続時精算課税制度について詳しく解説します。

相続時精算課税制度は、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与に際して選択できる制度です。同制度を適用すると一定額まで贈与税がかからなくなりますが、贈与者の死亡時に相続税で精算することになります。今回は相続時精算課税制度について詳しく解説します。

相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与に際して選択できる制度です。同制度を選択すると、対象の贈与者(特定贈与者)からの贈与に対しては一定額まで贈与税がかからなくなります。ただし、特定贈与者が亡くなった時に対象の贈与額を相続財産に加えて相続税を計算することになります。

また、相続時精算課税制度は一度選択すると取り消すことはできません。そのため適用するべきか十分な検討が必要です。

今回は相続時精算課税制度について詳しく解説します。

相続時精算課税制度とは

相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の直系卑属(子または孫)への贈与に際して選択できる制度です。制度を選択した贈与者(特定贈与者)から受ける贈与が合計2,500万円までは非課税となります。

その後、特定贈与者が亡くなった時には、対象の贈与額を相続財産に加えて相続税を計算する必要があります。また、特定贈与者から受けた贈与額の合計が2,500万円を超えた場合は、超過分に一律で20%が課される点にも注意が必要です。

生前贈与にかかる税金を相続税で納める方法であり、税金を先延ばしする制度といえるでしょう。納税義務がなくなるわけではないため、必ずしも節税につながるとは限りません。

ただし、令和5年度の税制改正により、同制度に様々な変更が生じました。従来の仕組みとは違い、現在は同制度を上手く活用すれば大きな節税効果を得られる可能性があります。

適用条件

相続時精算課税制度の適用を受けられるのは、以下の要件をすべて満たす場合のみです。

  • 贈与をした年の1月1日時点で、贈与者が60歳以上、受贈者が18歳以上である
  • 父母または祖父母などから直系卑属(子または孫など)への贈与である
  • 同制度を選択しようとする受贈者が、同制度の選択にかかる最初の贈与を受けた年の贈与税申告期間に必要書類を提出する

暦年課税制度との違い

暦年課税とはその年の1月1日から12月31日までに受けた贈与の合計額に応じて課税される、原則的な課税方式です。

暦年課税と相続時精算課税制度の違いとして、以下の3点が挙げられます。

  • 税率:暦年課税は贈与額に応じて10〜55%、相続時精算課税制度は超過分に対して一律で20%
  • 要件:暦年課税は誰でも、相続時精算課税制度は一定の要件を満たす場合のみ選択できる
  • 相続発生時の扱い:暦年課税の場合は相続開始前7年以内の贈与について相続財産に加算、相続時精算課税制度は累積贈与額を相続財産に加算

相続時精算課税制度の変更点【令和5年度税制改正】

令和5年度の税制改正により、相続時精算課税制度に大きな変更が2つ生じました。

年110万円の基礎控除枠が追加された

最も大きな変更が、年110万円の基礎控除枠が追加されたことです。

暦年課税の場合、年間110万円以下の贈与であれば贈与税が発生しません。一方、相続時精算課税制度はこれまで贈与税の基礎控除額の対象外でした。

贈与税の課税対象外

前述の通り、令和5年度の税制改正により、相続時精算課税制度にも基礎控除枠が追加されました。特別控除2,500万円とは別に、年110万円の基礎控除も受けられる仕組みとなっています。

税制改正前と後で、累積贈与額の計算方法が以下のように異なります。

  • 改正前:特定贈与者からの贈与全額を累積していく
  • 改正後:1年間で特定贈与者から受けた贈与のうち、基礎控除額を差し引いた分を累積していく

たとえば特定贈与者から1年間に250万円の贈与を受けたとします。この場合、累積贈与額として加える必要があるのは、250万円から基礎控除110万円を引いた140万円です。

相続財産への加算が不要

相続時精算課税制度の適用を受けた贈与について、年間110万円以下の金額は相続財産への加算も不要になりました。前項と同じく特定贈与者から1年間に250万円の贈与を受けた場合、相続財産に加算する額は140万円のみとなります。

110万円以下の贈与は申告が不要に

特定贈与者からの贈与が年110万円以下の場合、贈与税の申告が不要になりました。以前は金額を問わず贈与税の申告が必要であったため、申告の手間が大幅に下がっています。

相続時精算課税制度を適用するメリット

この章では、相続時精算課税制度を適用するメリットを4つ紹介します。

2,500万円までの贈与が非課税

相続時精算課税制度を選択した場合、特定贈与者から受ける贈与について累積2,500万円までは非課税となる点が大きなメリットです。また、年110万円の基礎控除も適用できるため、贈与税の負担を大幅に抑えられます。

2,500万円を超過した分の課税が一律20%

相続時精算課税制度による贈与の合計額が2,500万円を超えた場合、超過した分について一律20%の税率が適用されます。

暦年課税の税率は10〜55%と課税価格によって大きく異なり、財産合計額が大きいほど税負担も大きくなる仕組みです。そのため高額の贈与をする場合、相続時精算課税制度を選択した方が税負担を抑えられます。

生前贈与加算がない

暦年課税の場合、相続開始前7年以内に行われた贈与については、基礎控除以下でも相続財産の額に含める必要があります。この仕組みが生前贈与加算です。生前贈与加算の仕組みにより、生前贈与による節税対策が上手くいかないケースが多くみられます。

一方、相続時精算課税制度を適用した場合、年間110万円以下の贈与については生前贈与加算の必要がありません。相続開始前7年以内に行われた贈与についても同様です。

相続税対策になる

相続時精算課税制度は税金の先延ばしに近い制度であり、贈与税が非課税になる分、相続税を払う必要があります。そのため「わざわざ制度を使って贈与をしなくても、相続をすれば良いのでは」と考える人もいるかもしれません。

確かに財産の種類や金額によっては相続で問題ないケースもあります。しかし以下のような財産が含まれる場合、相続時精算課税制度の選択により節税対策ができる可能性が高いです。

  • 将来的に値上がりが予想される財産:相続財産として加算するのは贈与時の時価により評価した金額です。そのため将来価値が上がる可能性のある財産は、同制度を適用して早めに贈与した方が税額を抑えられる可能性があります。
  • 収益物件:相続税の課税対象になるのは収益物件だけであり、家賃収入は対象外です。一方で生前贈与をせず父母や祖父母が収益物件を保有し続けると、家賃収入により被相続人の現預金が増えていき、結果として相続財産が大きくなる恐れがあります。

相続時精算課税制度を適用するデメリット

続いて、相続時精算課税制度を適用するデメリットを2つ紹介します。

暦年課税が使用できなくなる

相続時精算課税制度を選択した後、暦年課税に変更することはできません。そのため同制度を選択する前に、暦年課税と比較してどちらが有利になるか十分に検討する必要があります。

小規模宅地等の特例を適用できなくなる

相続時精算課税制度を利用して贈与した宅地等については、小規模宅地等の特例を適用できなくなります。

小規模宅地等の特例とは、相続によって取得した宅地等が一定の要件を満たす場合に、対象の宅地の評価額を最大80%減額できる制度です。前述のように、小規模宅地等の特例の対象は相続によって取得した宅地等のみであり、贈与によって取得した宅地等には認められません。

まずは小規模宅地等の特例の対象になる財産の有無を確認しましょう。小規模宅地等の特例を受けられる土地がある場合、税負担を最小限に抑えるため、どちらの制度を利用するべきか検討する必要があります。

小規模宅地等の特例についてわかりやすく解説!要件や計算例を紹介

小規模宅地等の特例についてわかりやすく解説!要件や計算例を紹介

小規模宅地等の特例とは、相続財産のうち一定の要件を満たす宅地等について、相続税の課税価格に算入する金額を減らせる制度です。 特例の適用を受ければ相続税額を大幅に減額することができます。税負担を最小限に抑えるため、要件を満たすのであれば必ず活用するべき制度といえます。ただし、宅地の種類によって要件や限度面積、減額割合等が異なる点に注意が必要です。 今回は小規模宅地等の特例について詳しく解説します。

相続時精算課税制度を適用した方が良いケース

相続時精算課税制度を選択すると暦年課税に変更できないため、同制度を選択するべきか十分な検討が必要です。

しかし「どちらを選ぶべきか判断できない」とお悩みの人も多いでしょう。この章では、相続時精算課税制度を適用した方が良いケースの例を3つ紹介します。

財産が相続税の基礎控除額内の場合

財産の合計額が相続税の基礎控除額内の場合、相続時精算課税制度で贈与をするのがおすすめです。

相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。財産の合計額が相続税の基礎控除を下回る場合、相続時精算課税制度を適用すれば相続税が発生しません。

早めに生前贈与を済ませたいと考えており、かつ、財産の合計額が相続税の基礎控除を下回る場合は、同制度を適用するメリットが大きいです。

収益を得られる財産がある場合

収益を得られる財産がある場合も、相続時精算課税制度を適用して早めに生前贈与を済ませるのがおすすめです。相続税の課税対象になるのは収益を生む財産そのものだけであり、財産によって発生する収益はそのまま受贈者のものになります。

価値が上昇が見込める財産がある場合

価値の上昇が見込まれる財産がある場合も、相続時精算課税制度を適用するのがおすすめです。相続税の計算に用いるのは贈与時の時価であるため、価値が上がる前に贈与を済ませることで税負担を抑えられます。

相続時精算課税制度の利用は税理士に相談を!

相続時精算課税制度を上手く活用すれば税額を大幅に軽減できます。ただし、選択した後に暦年課税に戻すことはできないため、事前に十分な検討が必要です。

税負担を確実に抑えるため、相続時精算課税制度を選択する前に税理士へ相談することをおすすめします。

※税理士に相談するメリットや税理士の選び方については、以下の記事をご覧ください。

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