使途不明金とは?発生しやすい原因や処理方法、対策を徹底解説

企業や個人事業主では、支出が発生すれば、金額、支出先、使途を記録するのが基本です。しかし、証憑書類の紛失や記帳漏れによって何の支出だったのか不明な費用が発覚する場合も多くあります。 その場合、目的が不明な支出は「使途不明金」として扱われ、税務上で不利となってしまうため注意が必要です。 本記事では、使途不明金の発生原因や処理方法、注意点について解説します。経理担当の方や経営者の方は特に必見の内容です。

企業や個人事業主では、支出が発生すれば、金額、支出先、使途を記録するのが基本です。しかし、証憑書類の紛失や記帳漏れによって何の支出だったのか不明な費用が発覚する場合も多くあります。

その場合、目的が不明な支出は「使途不明金」として扱われ、税務上で不利となってしまうため注意が必要です。

本記事では、使途不明金の発生原因や処理方法、注意点について解説します。経理担当の方や経営者の方は特に必見の内容です。

使途不明金とは支出の目的が不明な費用

使途不明金とは、企業や個人が行った支出のうち、具体的な用途が記録されていない、または説明できない費用のことです。

通常、会計処理を行う場合は、支払先、支払金額、使途を漏れなく記載します。例えば、取引先である企業Aに対して1万円分のお中元を贈った場合には、以下のように仕訳処理を行います。

借方 貸方 摘要
接待交際費 10,000円 現金 10,000円 A社へのお中元代

領収書を発行・保管しており、上記のように仕訳処理が行われている場合には、使途不明金となることはありません。しかし、万一領収書を紛失したり、摘要欄の記録漏れが生じた場合には、支出の使途を明確に説明できない費用として扱われてしまい、使途不明金とみなされてしまいます。

使途不明金とは法人税法上の概念であり、会計上にそのような勘定科目は存在しません。そのため、会計上では使途不明金として仕訳処理を行うのではなく、交際費や雑費、あるいは雑損失として処理します。

また、使途不明金は支出の内容が明らかではない費用であるため、事業との関連性を証明できません。そのため、損金に算入できず課税所得が大きくなり、所得税や法人税が高くなってしまいます。

使途秘匿金との違い

使途秘匿金とは、故意に使途を隠すために詳細を記載しない支出です。具体的には、支出の相当な理由がなく、相手方の名称や所在地、支出した目的が帳簿に記載されていない費用を指します。

実際にある例では、公共工事やイベント受注の便宜を図ってもらうための賄賂や談合の裏金が該当します。

使途秘匿金についても使途不明金と同様に、事業との関連性を説明できない費用であるため、損金に算入できないという点では共通です。しかし、使途秘匿金は追加で重い税務ペナルティが課せられ、支出額の40%を乗じた額の所得税・法人税を追徴課税として支払う必要があります。これは、支出内容を意図的に隠そうとする使途秘匿金の方が悪質性が高いとみなされるためです。

いずれにしても、税務上で不利になることは同様であるため、会計処理の透明性を高めることが重要です。

使途不明金が発生しやすい原因

使途不明金が発生する主な原因は以下の2つです。

  • 領収書や請求書などの証憑書類の紛失
  • 取引の記録漏れ・記帳ミス

まず、証憑書類を紛失してしまえば、記帳が適切に行われていたとしても、支出を証明する資料が存在しないことになるため、使途不明金とみなされてしまいます。

また、取引の記録漏れ・記帳ミスも使途不明金が発生しやすい原因となっています。支出金額や相手方が記載されていても支出内容が明確に記載されていない場合には、プライベートな支出ではないのかと疑われ、使途不明金と判断されてしまう可能性があります。

特に小規模な企業では、日々の業務に追われて会計管理が疎かになりがちです。交際費や経費など、経費の詳細が不明瞭になり、使途不明金が発生してしまうケースが多く見られます。

使途不明金が発覚しやすいタイミング

使途不明金が発覚しやすいのは、基本的に税務調査のタイミングです。

税務調査では、提出された書類・資料をもとに対象期間の帳簿に不備がないか詳細にチェックされます。支出先の名称や所在地、支出内容などが適切に帳簿に記載されていなければ、税務調査官に指摘されてしまい、修正申告・追徴課税が課されてしまう可能性があります。

また、保管されている証憑書類等をもとに正確に帳簿が記載されていたとしても、その内容に虚偽がないか、取引先をはじめとする支出先の企業を調査する「反面調査」が実施される場合もあります。そのため、取引記録や書類・データ等の支出の証明となるものを事前に洗い出し、調査前に準備しておくことが大切です。

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使途不明金が発生した時の処理方法

ここでは、実際に使途不明金が発生した場合の対応の流れや仕訳処理について説明します。

支出の詳細を確認する

使途不明金が発生した場合、支出の詳細を確認できる書類を探しましょう。記載漏れによるものか、領収書の紛失によるものか、内容が把握できない費用なのかを特定するためです。

もし記載漏れである場合には、関連書類をもとに帳簿に適切に記載することで使途不明金を防げます。また、社内の記録や関係者への調査を通じて、領収書など証憑書類の紛失が原因であると判明した場合には、可能であれば再発行してもらうことで対処することが可能です。

損金不算入として申告する

もし関連書類や取引の詳細な記録が見つからず、使途不明金が明確に説明できない場合、税務上は損金不算入として扱うことになります。

会計上では、交際費や雑費、支払い手数料などの具体的な勘定科目で仕訳処理を行い、どの勘定科目に属する費用かも不明な場合には雑損失で計上します。

ただし、雑損失はさまざまな営業外費用を計上できる勘定科目であり、使いすぎると会計の管理が難しくなるだけでなく、会計の透明性を損なってしまうため、多額の金額を計上しないよう注意しましょう。

使途不明金の発生を防止する対策

使途不明金は税金負担を重くするため、できるだけ発生しないように注意が必要です。

以下では、使途不明金の発生を防止するための対策を2つ紹介します。

証憑書類の管理・記帳業務を徹底する

まずは日常的な証憑書類の管理を徹底することで、使途不明金の発生を防ぐことができます。取引ごとに領収書や請求書を確実に保管し、その上で支出の内容を帳簿に明確に記載することが重要です。

証憑書類の紛失を防止するためにも、紙ではなく電子データとして保存することも有効です。電子帳簿保存法に基づき、スキャナ保存など一定の条件を満たせば、紙の書類を電子データのみで保存することが認められます。

取引の詳細を記録する

取引の際には、取引内容を詳細にメモやデータに残しておくことも重要です。領収書を発行したとしても、支出内容を証明するために必要な情報が不足している場合があるためです。

例えば、取引先に贈るお中元を一括で購入し、接待交際費として計上した場合、配布先に「関係者各位」「取引先」といった曖昧な記載しか残されていない場合、どこにいくつ贈ったのかという疑問が生じてしまいます。

使途不明金とみなされないためには、支出の相手方、金額、目的が詳細に記載されている必要があるため、事前に配布リストなどを作成し、どの取引先に配布したのかを後ですぐに確認できるようにしておく対策が肝要です。

使途不明金の注意点

ここでは使途不明金に関する注意点を2つ紹介します。

損金不算入となれば税金が増加する

先述したように、使途不明金は損金不算入として扱われます。損金不算入となれば、会計上は費用で処理できても税金の計算上は費用として認められないため、課税所得が増加し法人税や所得税の負担が大きくなります。

特に大きな額の使途不明金が発生すると、企業の財務状況に悪影響を及ぼすことがあるため、日々の証憑書類や帳簿管理は徹底して行いましょう。

要件を満たしていても使途不明金になる可能性がある

法人では、資本金の額によって接待交際費として認められる金額に上限が設定されています。

資本金の額別の接待交際費の上限は以下の通りです。

企業規模 上限金額
資本金が1億円以下の企業 ①800万円まで
②飲食費の50%まで のいずれか
資本金が1億円を超える企業 飲食費の50%まで

たとえ領収書など必要な書類がそろっていたとしても、この上限を超える金額については経費として認められず、使途不明金となってしまいます。

接待交際費の上限を超えること自体には問題はありませんが、節税効果が軽減されてしまうことだけは注意しておきましょう。

まとめ

使途不明金とは、具体的な用途が記録されていない、または説明できない支出のことです。

使途不明金を発生させないためには、日常的な会計処理を適切に行い、取引の透明性を保つことが大切です。

証憑書類の管理や帳簿への記載を適切に行わなければ、税務調査で使途不明金や使途秘匿金と指摘されてしまい、税金負担が重くなってしまう可能性があるため注意しましょう。

もし「現在の記帳方法が適切かわからない」「税務調査で使途不明金とみなされないか不安」といったお悩みをお抱えの場合は、専門家である税理士に相談してみることをおすすめします。正しい記帳業務の指導により、より適正な申告を行えるようになり、税務調査の対象となった場合にも安心して対応できるようになるでしょう。

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