サラリーマン(給与所得者)のほとんどは勤務先で年末調整をしてくれるので確定申告の必要がありませんが、年収2,000万円以上の方や2か所以上から給与の支払いを受けてる方、自営業者の方などは、自分で確定申告をして納税または還付を受ける必要があります。年度内の収入の合計額から各種控除を差し引いた金額が課税対象となるので、節税のためには控除が可能な項目を漏れなく計上することが大切です。
同一世帯で他の家族と一緒に生活をしていれば、確定申告をする際に扶養控除を申告することができます。ただし扶養控除が認められる条件(年齢・本人との関係・年収額など)が細かく定められているので、確定申告に書類に記入する前にきちんとチェックしておくことが大切です。
確定申告で扶養控除を受ける条件は?
確定申告で扶養控除が受けられる条件は、以下の通りです。
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族をいいます。)又は都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。
- 納税者と生計を一にしていること。
- 年間の合計所得金額が48万円以下であること。(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。
配偶者以外の親族とは、6親等内の血族と3親等内の姻族が該当します。これら以外にも、法的に養育を委託された里子や養護を委託された老人も含まれます。収入については、年間の合計所得額が48万円以下(給与所得者は103万円以下)であることが求められます。アルバイトや自営業で一定以上の収入があると、扶養控除が認められないので注意しましょう。
扶養控除で控除できる金額は?
控除対象扶養親族
扶養控除に該当する家族がいる場合に実際に控除が認められる金額ですが、基本は38万円です。38万円の一般の扶養控除が認められるのは、12月31日時点で年齢16歳以上18歳以下または年齢23歳以上69歳以下の扶養親族であり、扶養親族の年間あたりの合計所得額が48万円以下という条件を満たす必要があります。ちなみに扶養親族の年齢が19~23歳または70歳以上の場合は、38万円に一定額が加算されます。
特定扶養親族
12月31日時点で年齢が19歳以上23歳未満の特定扶養親族の場合は、基本額である38万円に25万円が加算された63万円となります。
老人扶養親族
70歳以上の高齢者を扶養している場合は、老人扶養親族にあてはまるので一般の扶養控除の38万円に対して10万円が加算されます。
同居老親等
70歳以上の高齢者で同一の住居で居住してはいないものの、多くの時間を一緒に過ごしたりしているような場合は、「同居老人等」の条件に当てはまり、基本額(38万円)に20万円が加算されます。ただし老人ホームで生活をしているような場合は、同居しているとは認められず加算額は10万円となります。
扶養控除と似ている控除
配偶者控除
確定申告の扶養控除の欄に間違えて記入してしまうことが多いのは、配偶者です。配偶者については扶養控除ではなく、配偶者控除の対象となります。配偶者控除の申告ができるのは、役所に婚姻届を提出して法的な夫婦になっている場合です。婚姻届を提出していない内縁関係だと、配偶者控除の対象とはならないので注意しましょう。
勤労学生控除
- 103万円以下であれば、納税者本人が扶養控除を適用できる。
- 103万円を超えて130万円以下であれば、納税者の扶養親族が年末調整又は確定申告で勤労学生控除を適用できる。
学校に通う子供がアルバイトなどをして年間あたり103万円以上130万円以下の収入を得ている場合は扶養控除の対象とはならず、勤労学生控除を申告できます。勤労学生控除を適用した場合には、控除額が27万円となります。収入額に加えて、特定の学校に通っていること(学校教育法に規定する小学校・中学校・高等学校・大学など)など一定の要件を満たす必要もあります。
寡婦控除
寡婦控除とは配偶者(夫)と死別または離婚した納税者本人(女性)に認められる控除で、扶養控除とは異なります。具体的には、夫と別れた女性で「ひとり親」に該当しない方で以下2つのいずれかに当てはまる方です。
- 夫と離婚した後婚姻をしておらず、扶養親族がいる人で合計所得金額が500万円以下の人
- 夫と死別した後婚姻をしていない人または夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人
※注:「夫」とは、民法上の婚姻関係にある人のことをいいます
上記いずれかに該当する場合は、27万円の所得控除の適用ができます。
ひとり親控除
納税者がひとり親であるときは、一定の金額の所得控除を受けることができます。これをひとり親控除といいます。
ひとり親とは、原則としてその年の12月31日の現状で、婚姻をしていないことまたは配偶者の生死の明らかでない一定の人のうち、次の3つの要件のすべてに当てはまる人です。
3つすべてに該当する場合には、35万円の所得控除が適用できます。
- その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないこと。
- 生計を一にする子がいること。(この場合の子は、その年分の総所得などが48万円以下で、他の人の同一整形配偶者や扶養親族になっていない人に限られます。)
- 合計所得金額が500万円以下であること。
まとめ
扶養控除は認められる条件が細かく定められており、年齢や年収額によっては控除の対象にならない場合があるので注意が必要です。一般の扶養控除の金額は38万円ですが、扶養家族に大学生や70歳以上の親や祖父母がいる場合は控除額が増額されるということを知っておきましょう。大学生や専門学校に通う子供がアルバイトをして一定以上の収入を得ている場合は、確定申告までに正確な年収額を把握することが大切です。
同居する親族などが扶養控除に該当しなくても、配偶者・勤労学生・寡婦・ひとり親控除、などが存在します。確定申告をする時にいずれかの条件にあてはまるかどうかを確認することが大切です。
【監修者】代官山税理士法人 / 代表 大勝 健司
会計士試験合格後、監査法人に入社。幅広い事業の監査業務に従事。 その後、売上高数千億の一部上場企業(小売業)にて、企業内会計士として経理業務に従事。税理士として、決算書の作成、法人税申告書、相続税の相談から申告実務全般にも携わる。また社会保険労務士として事業会社において各保険の入退社手続き、役員及び従業員向けの退職金制度導入、就業規則の作成等に至るまでの労務を経験。社会保険の知識にも明るい。ヒトとカネの融合的視点からのアドバイスを可能とする。
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