確定申告を行うときには、経費を計上するという作業が必要となることが多いです。交通費は確定申告の際に経費として計上することができます。個人事業主でもサラリーマンでも確定申告の際に申告することができますが、全てが計上できるわけではないので注意が必要です。ここでは個人事業主とサラリーマンの立場ごとに、確定申告における交通費の取り扱い方や注意点について詳しく解説していきます。
申告内容が間違っている場合は修正が求められることになったり、追徴課税が発生したりする可能性があるでしょう。トラブルを引き起こさないためには間違いなく正しく確定申告を済ませることが重要なので、あらかじめ交通費と経費の関係について理解を深めておくことが大切だと言えます。
確定申告と交通費の関係:個人事業主の場合
旅費交通費はどこまで認められる?
個人事業主の場合、事業のために移動した際の交通費は確定申告時の経費の対象となります。具体的には、打ち合わせや接待に行くために利用した電車やバス、飛行機の料金を経費として計上することが可能です。ただし、打ち合わせや接待が終了した後にプライベートな移動がある場合、それを含むことはできません。電車やバス以外に、タクシー代やガソリン代などを含めることもできます。
旅費交通費として処理を行うことになり、出張旅費と交通費の両方が含まれているので、コインパーキングで支払ったお金や宿泊の際に必要となったお金も申告可能です。本来なら日帰りできたけれど、翌日に観光するために宿泊したという場合、宿泊費用に計上すると問題になることがあると理解しておきましょう。
固定給は認められない
サラリーマンの場合は交通費や宿泊費を精算するときに、固定額を精算する固定給という方法で実施されることがあります。ですが、個人事業主の場合は交通費も宿泊料金も実費精算したものだけが認められるので、固定給は確定申告の際に経費として認められないことを覚えておきましょう。
ICカードでの支払いも認められる
個人事業主として働いている人の中には、ICカードにチャージして電車やバスを利用するという人も多いはずですが、これも交通費に計上することができます。ただし、カードにチャージを行った時点では経費に含まれず、使用したときに使用分だけが経費として認められることを知っておきましょう。使うたびに振り替える方法は面倒だと感じられるはずですが、月締めで使用分を一括で経費に振り替えることも可能です。切符や乗車券を買う場合と仕訳方法は違ってきますが、確定申告時に問題なく交通費に含めることができるので安心して良いと言えます。
福利厚生費になる場合も
確定申告において、特定の交通費は福利厚生費になる場合もあるので注意が必要です。個人事業主が従業員と社員旅行に行く場合は福利厚生費に該当するので、仕訳や確定申告の際に交通費に計上しないようにしてください。期間や費用負担、参加割合などの条件があるのでこれを詳しく確認しておく必要はありますが、単に交通費として処理できないケースもあることを理解しておくべきです。
従業員を含めた社員旅行がある場合は、確定申告を行う前に交通費と福利厚生の違いや関係を確認しておきましょう。
確定申告と交通費の関係:サラリーマンの場合
特定支出控除とは?
- 通勤費:一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出
- 転居費:転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出
- 研修費:職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として研修を受けるための支出
- 資格取得費:職務に直接必要な資格(弁護士、公認会計士、税理士などを含む)を取得するための支出
- 帰宅旅費:単身赴任などの場合で、その者の勤務地又は居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出
- 勤務必要経費:書籍や定期刊行物などの図書費、制服や作業服などの衣服費、取引先との接待や贈答などの交際費等が該当(上限:65万円)
サラリーマンの場合、確定申告において特定支出控除が認められています。会社の業務に経費を負担する場合に受けられる控除であり、実際の負担額をもとにして考えることを知っておきましょう。通勤費や帰宅旅費を含む様々な費用が発生することがありますが、全て会社から負担してもらうことができずに一律支給となっていることがあります。支給された額以上の出費は持ち出しとなりますが、この部分を特定支出控除に入れることができるので、該当する経費を把握しておくことが大切です。
特定支出控除の要件
- 特定支出控除として認められる経費の合計が給与所得控除額の金額の半分を超えること
- 会社が発行した特定支出に関する証明書を添付すること
持ち出し分がある場合は確定申告の際に特定支出控除を受けることができますが、要件を満たしておく必要があります。所得税を計算するために認められている必要経費に給与所得控除がありますが、これの金額の半分を超えていることが1つの要件です。証明書の提出も必要なので、会社から発行されたものは大切に保管しておく必要があります。
特定支出控除の計算方法
サラリーマンが確定申告で特定支出控除を受けたいのであれば、自分自身で計算を行う必要があります。特定支出が交通費だけの場合は、まず課税期間に自己負担した交通費の総額を算出することから始めてください。その次には、特定支出控除の判定に必要となる給与所得控除額を算出します。それぞれの金額を比較してみたときに、前者が後者の半額を超えているかどうか確認しましょう。
もしも、前者が後者の半額よりも小さい金額となってしまえば、特定支出控除の要件を満たしておらず、控除を適用することができないです。条件を満たしている場合は前者から後者を半額にしたものを引けば特定支出控除額が分かります。年収3,500,000円の人の自己負担した交通費が650,000円だった場合は、以下のような計算方法になるでしょう。給与所得控除額は収入に30%をかけて80,000円を加算することになり、1,130,000円となります。これの半額は565,000円なので特定支出額のほうが多く、適用できると判断することができるでしょう。
最後に特定支出控除額を計算するために、特定支出の合計から給与所得控除額の半額を引きます。650,000円から565,000円を引くことになるので、85,000円という値を導き出すことができるでしょう。難しい計算方法ではないので、正しいやり方さえ覚えていれば、確定申告の際に間違えることなく特定支出控除額を導き出すことができます。
特定支出控除をするために必要な書類
確定申告の際にサラリーマンが特定支出控除を受けたいのであれば、会社が発行した証明書の提出が必要不可欠となります。これがなければ、費用を認めてもらうことができません。複数の特定支出がある場合は使用区分ごとに証明してもらわなければならないので、申告のためには不足がないように書類を集めておくことが大切だと言えます。
まとめ
個人事業主もサラリーマンも確定申告の際に交通費について処理しなければならないことがありますが、働き方によって経費として計上するのか、特定支出控除を適用させることになるのかという違いがあることを理解しておくべきです。いずれの立場でも様々な交通費を確定申告時の経費にできる可能性がありますが、条件は違っているので事前に確認しておくことが大切だと言えます。
仕訳方法が特別になったり計算が必要になったり、書類を集めたりしなければならないこともあるので、確定申告の締め切り直前になって焦ることがないように、早いうちから確定申告時の交通費について学んでおきましょう。正しい知識を持ち、スムーズに間違いなく申告できるようにしておくことをおすすめします。
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