
多くの人は会社の給与から所得税を源泉徴収されるため、確定申告を行う必要は基本的にはありません。これは会社で所得に応じて所得税の申告を行っていることによるためです。副業などを行っている場合にはこれを含めた所得に対する確定申告が必要になる場合もありますが、ほとんどの場合には行っていると言う人は少ないのが実態です。
しかし、会社を退職し年金を受け取るようになると、その収入を客観的に判断し申告をする手立てがなくなるため、確定申告を行わなければならないことになります。ここでは確定申告の方法や不要となるケース、またその他の注意点などを詳細に解説します。実際にはすべての年金受給者が確定申告が必要なわけではなく、これが不要なケースもあるため、これらをそれぞれケース別に詳細に解説していきます。
年金受給者で確定申告が必要なケース
- 公的年金等の収入金額(2ヵ所以上ある場合は合計額)が400万円を超える場合
- 公的年金を含む雑所得以外の所得が20万円を超える場合
- 一定額以上の医療費を支払った場合
- マイホームを住宅ローンなどで取得あるいはリフォームした場合
- 社会保険料控除や生命保険料控除、地震保険料控除などを受ける場合
- ふるさと納税など寄附金控除を受ける場合
- 災害や盗難に遭った場合
年金受給者はその年金支給額から所得税が控除されることになっていますが、確定申告を行う必要があるケースもあります。これは実際には上記の通りです。
公的年金等の収入金額(2ヵ所以上ある場合は合計額)が400万円を超えた場合や、公的年金を含む雑所得以外の所得が20万円を超えたときは確定申告を行う必要があります。
また一定額以上の医療費を支払った時、マイホームを住宅ローンなどで取得あるいはリフォームした時も対象となります。さらに社会保険料控除や生命保険料控除、地震保険料控除などを受けた場合のほか、ふるさと納税など寄附金控除を受けたときも確定申告を行わなければなりません。
災害や盗難に遭った場合にも、その損害額に応じて控除を受けることができるので、この場合にも確定申告を行うのが大切です。
年金受給者で確定申告が不要なケース
- 公的年金等の収入金額(2ヵ所以上ある場合は合計額)が400万円以下
- 公的年金を含む雑所得以外の所得が20万円以下
年金受給者で確定申告が不要なケースは、大きく分けて2つあります。
1つは、公的年金等の収入金額(2ヵ所以上ある場合は合計額)が400万円以下の場合と、もう一つは公的年金を含む雑所得以外の所得が20万円以下の場合です。
これらは一般的な給与所得者が副業やその他の収入を得た場合の確定申告が不要なケースと同じような考え方となっており、様々な手間を省くためと言う要素も含まれています。
一般的に年金受給者の多くはこれまで確定申告を行ってきた経験が非常に少なく、また知識の乏しいため確定申告を行うことが非常に大きな負担となることが少なくありません。これを軽減するために一定の金額までは様々な雑所得等の収入が許されており、煩雑な手続きを減らすためにも有効な仕組みとなっています。
年金受給額によって確定申告が必要か不要かが変わる
老齢基礎年金や老齢厚生年金等の公的な年金は法律上は雑所得とみなされるため、これらの合計が控除額の範囲を超えている場合には確定申告の対象となるため注意をしなければなりません。
公的年金を受けている人に対しては公的年金等控除と言う制度が適用されており、一定の金額までは所得控除の対象となるため確定申告は必要がありませんが、これを超えた場合には申告を行い所得税の調整を行う必要があります。 その金額は年齢と公的年金の収入金額によって変わっており、その収入金額に応じて控除額の上限が決められているのでこれに沿って計算する必要があります。

例えば65歳未満の場合には公的年金等の収入金額が1,300,000円未満である場合。その控除額は700,000円となりますが、1,300,000円を超え4,100,000未満になると、収入金額に0.25を掛け、これでさらに37万5000円を加えた額となるため注意をしなければなりません。
また、この金額は65歳以上になると異なるため注意が必要です。65歳以上の場合には基本的には年金の金額が3,300,000円未満の場合には控除額が1,200,000円となるため、65歳未満に比べ控除額や収入の上限が大きくなると言う特徴があります。
年金受給者の負担を軽減:確定申告不要制度
年金受給者は、基本的には高齢であるため様々な手続きに対する身体的な負担が非常に大きいと考えられるものです。そのため、これを軽減するために確定申告不要制度が導入されています。
確定申告不要制度は様々な収入が年金以外にあっても、それが一定の金額を超えていなければ特に申告をする必要がないと定められているものであり、具体的には年金と他の収入等の合計が4,000,000円以下である場合と、年金以外の所得の合計が200,000円以下と言う2つの条件を満たしていることが必要です。
例えば公的年金で基礎年金が年間3,000,000円である場合、これに対してその他の年金収入が1,000,000円を超えなければ控除の対象となることになります。一般的にはこれほどの高額の年金を受け取っている人がほとんどいないため、ほぼほとんどの人がこの条件では対象となるのですが、2番目の雑所得が200,000円以下と言う部分については十分に注意をしなければなりません。
高齢者でパートやアルバイトを行う機会は近年非常に増えており、これらの仕事を行うと年間200,000円未満と言う条件は簡単に超えてしまうことが予測されるためです。この場合、年金収入額が4,000,000円以下であっても確定申告を行わなければならないことになります。

確定申告不要制度の対象者かどうかの確認方法
自分が確定申告不要制度の対象であるかどうかを確認するには、公的年金の源泉徴収票をチェックすることが最も良い方法です。
この源泉徴収票は毎年1月から2月に日本年金機構や企業年金の管理部門等から郵送されるものとなっており、この源泉徴収票の支払い金額欄の金額が4,000,000円以下になっているかどうかを確認することになります。
この金額が4,000,000円を超えていなければ、基本的には条件の1つを満たすことになるのです。
これに合わせてパートやアルバイトなどを行っている場合にはその所得金額を計算し、これが200,000円を超えていなければ2つ目の条件を満足していることになります。万が一この金額が200,000円を超えている場合には確定申告が必要となるため、十分に注意をする必要があります。
年金の受給金額は年間4,000,000円を超えると言う人は非常に少ないものですが、パートやアルバイトなどで年間200,000円を超える収入を受け取っていると言う人は意外と多いものです。そのため、この店には十分に注意をすることが大切です。万が一200,000円を超えている場合には、年金所得が4,000,000円以下であっても確定申告を行う必要があることにも注意をしておくことが大切です。
年金受給者の確定申告で受けることができる各種控除
医療費控除
年金受給者が確定申告を行うことで受けられる控除の中に医療費控除があります。これは医療費の自己負担額が年間100,000円以上の場合、これを申告することで1部が免除されると言う制度となっているのがポイントです。
また所得金額が少ない年金受給者の場合には、自己負担額が所得金額に申告分離課税の所得を加えた額の5%以上であれば、控除の対象となることも覚えておくと便利です。
年金受給者は高齢であるため、医療費がかさむことも多いため覚えておくと便利な制度です。
保険料控除
サラリーマンの場合には年末調整で様々な保険料控除を受けることができますが、年金受給者は年末調整がないためこのような控除をすることができません。そのため確定申告を行うことでこの年末調整に相当する保険料の控除をすることができます。
加えて、その対象者が生計を1つにしている親族の国民年金保険料を納めている場合には、確定申告を行うことでその控除対象を追加することも可能であるため、忘れずに申告をすることが必要です。
住宅ローン控除
年金受給者が住宅の購入やリフォームのために住宅ローンを利用した場合、一定の条件を満たすことで住宅ローン控除を受けることができます。この控除制度には大きく分けて2つあり、一般的な住宅ローンの場合には住宅借入金等特別控除と言うものとなります。
また近年ではバリアフリー改築や省エネ改修工事等特例と認められるリフォーム等の対象があり、これに該当する場合には特定増改築等住宅借入金等特別控除となるので、その分類にも注意をしなければなりません。 これらはそれぞれ控除額が異なるため、申告を行う場合にはこの2つの要素を区別して行うことが必要です。これを誤ると正当な権利である控除を受けられなくなる可能性もあるため、十分に注意をすることが大切です。
寄付金控除(ふるさと納税)
年金受給者が様々な寄付行為を行った場合には、その対象に応じて控除申請を行うことができます。国への寄付金や、様々な都道府県等への寄付金は控除対象となっているため、これを行うことで申告をすると税金の1部が免除される仕組みとなっているのです。
その中でも特に都道府県等に対する寄付金はふるさと納税として非常に注目されており、これにより地方税等の減免を受けることも可能です。ふるさと納税はワンストップ特例制度を利用すると確定申告を行うなくても控除を受けることができるので、知っておくと便利です。
雑損控除
災害や盗難にあった場合には、その事実を申告することで税金の控除を受けることができます。これを雑損控除といい、確定申告を罹災証明や盗難届けといった証明書類と一緒に提出することで、その損害額に応じて控除を受けることができる制度となっています。
これらの雑音所得を申告する際には、罹災証明や盗難届けのほか具体的な損害金額を証明する書類が必要となっており、これは関係省庁等で発行をしてもらえるので、知っておくと便利な制度です。
その他
公的年金等の源泉徴収票の中には様々な項目が記入されていますが、特に注意をしなければならないのは本人卵や控除対象配偶者の有無など様々な生活環境の条件です。特に控除対象配偶者の有無や控除対象扶養親族の数、及び本人以外の障害者の数などに変更があった場合には、確定申告を行い速やかにこの内容の訂正を行うことが必要です。
これらの訂正によって税額が変わることがあり、また訂正を行わなかったことが判明すると場合によっては追徴課税等の処分を受けることにもなるため、十分に注意をしなければなりません。これらの条件に関しては毎年内容を確認し、必要に応じて訂正をすることが必要となります。そのためにも、確定申告は基本的に行っておくようにすると非常に便利です。
まとめ
年金受給者は確定申告を行う手間を省くために様々な制度が設けられていますが、実際にはこの確定申告を行わなければ受けることができない様々な控除制度も存在しています。そのためこれらの内容を十分に知っておくとともに、基本的には毎年確定申告を行うようにしておくことが漏れがない良い方法となっています。
高齢者は医療費が大きくなることが多く、また扶養家族がいる場合には様々な出費も大きくなることが少なくありません。これらの負担を軽減するために様々な控除制度が用意されているので、これらの存在を日ごろから認識しておくとともに、確定申告の必要性を理解した上で適宜行っておくことが税制面で有利に対応するために必要なこととなっています。