給与所得控除とは?所得控除との違い、計算方法などを徹底解説

日本で定められている税金には様々なものがあります。普段の買い物で支払っている消費税や、ガソリン、酒類、タバコなどに設定されている税、土地などの資産を持っている人に課せられる固定資産税、労働によって得た賃金などに課せられる所得税などです。
税金の計算は大きく分けると総合課税と申告分離課税に分かれ、税率も異なっていますが、定められている税制で税が軽減されることがあります。これを控除と呼びます。控除の仕組みをよく理解しておかないと、本来納めなくてはならない金額以上の税金を多く納めることになり、生活で使えるお金も減ってしまうので気を付けなくてはなりません。
払いすぎてしまっている税金は確定申告をすることで取り戻すことができます。

給与所得控除とは?

控除の中でも大きいものが給与所得控除です。給与所得控除は収入の金額によって異なり、令和2年度からは最低55万、最大195万円が給与所得控除として、収入から差し引いて計算することができます。
収入額によって計算が異なるので注意しましょう。会社勤めをしている人は年末の源泉徴収票を確認すれば、計算後の金額が記載されています。

給与所得控除は何のためにある?

給与所得者の経費計上のため

会社員であっても仕事をするために自腹の支出が発生することがあります。
例えばスーツや靴を揃えたり、仕事で必要になる手帳や文房具、交通費では賄えなかった分の支出などです。自営業の場合はこうした支出は帳簿を付けて収支報告書を提出することで、経費として計上することができますが、サラリーマンは経費を計上することができません。そこでそうした一定の支出があるだろうと見越して設定されているのが給与所得控除なのです。

給与所得者増加による公平性のため

サラリーマンが経費を計上できないのは、給与所得者が自営業者と比較すると圧倒的に多く、1人1人にかかった経費を税務署で管理することが大変なためです。もしすべての給与所得者の経費を正確に管理しようとしたら、今よりもはるかに多い人手が必要となってしまい、税務署の負担が大きくなるでしょう。
そこで給与所得者には一律の控除額を設けることによって、管理や計算をしなくても負担を軽減することができるようにしたのが、この給与所得控除の意義です。給与所得控除は所得によって異なるのも、収入が大きい人はそれなりの支出が発生していることが多いためです。実際には支出がなくても給与所得控除分は収入から引いて計算することができます。

2020年以降の基礎控除・給与所得控除の変更点

基礎控除額が10万円増額

2020年に基礎控除と給与所得控除が変更されました。基礎控除とはだれでも一律で所得から引くことができる金額です。つまり収入が基礎控除に満たなければ税金の支払いは一切発生することはありません。税の発生しない範囲で働きたい人は基礎控除の変更はしっかりと覚えておいた方が良いです。
従来はどのような人も一律で38万円でしたが、2020年からは10万円増額して48万円となりました。所得が低い人にとっては税負担が軽減されるようになります。

基礎控除に所得制限

今までの基礎控除は全ての人が対象でしたが、2020年度からは所得制限が加わることになりました。
所得が2400万円までの人は48万円、2400万円以上の人は段階的に減少していき、2500万円以上の収入の人の基礎控除は0円です。
これは収入の多い人には基礎控除は必要ないという考えのもと設定されています。普通の会社で働いている多くの人にとっては2400万円はかなり高い金額設定なので、そこまで気にする必要はありません。高所得者になったときは基礎控除が減るということを覚えておきましょう。

給与所得控除額は10万円減額

一方で基礎控除が10万円増えた分、給与所得控除の最低金額が10万円引き下げられています。今までは65万円でしたが、2020年からは55万円となりました。年間に103万円まではアルバイトをしても大丈夫と言われているのは、この基礎控除と給与所得控除を合わせた金額だからです。
総合的に103万円というラインに変更はありませんが、給与所得控除が10万円減ったことで年収が850万円以上の人にとっては税負担が増えることになります。

給与所得控除額の上限額も変更

給与所得控除の上限額も変更になっています。今までは収入が1000万円以上の人は上限220万円の控除を受けることができていましたが、2020年からは850万円以上で上限195万円と控除できる金額や収入制限が厳しく設定されました。
収入が850万円以下の人は基礎控除の増額分と給与所得の減額分が相殺されるため、税額は以前と変化はありません。
ただし、特別障害者に該当する人、23歳未満の扶養親族がいる人、特別障害者である同一生計配偶者、扶養親族がいる人は所得金額調整控除を受けて負担を減らすことができます。

給与所得控除と所得控除の違いとは?

  • 雑損控除
  • 医療費控除
  • 社会保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 寄附金控除
  • 障害者控除
  • 寡婦(寡夫)控除
  • 勤労学生控除
  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除

控除には給与所得控除以外にも様々なものがあります。高額な医療費を負担している人が利用できる医療費控除、支払った健康保険料や社会保険料に対する社会保険料控除、養っている家族がいる場合の扶養控除や配偶者控除、アルバイトをしながら学生をしている人が利用できる勤労学生控除、民間の生命保険の支払いに対する生命保険控除などです。
それぞれで控除できる金額はことなりますが、所得から差し引いて計算することができるので、上手に利用すると所得からたくさん差し引くことができ、結果として税負担を軽減することができます。給与所得控除は給与がある人が利用できる控除ですので、他のものとは明らかに性質が異なります。会社の年末調整後に控除を利用する場合は、確定申告が必要です。

給与所得控除の計算方法とは?

給与等の収入金額が660万円未満の場合

では実際に給与所得控除の計算をしてみましょう。例えば収入が660万円以下の人の場合、給与所得控除は収入金額の20%+44万円とされています。この計算をすると176万円が給与所得控除となり、他に差し引くものがなければ484万円が課税所得となります。
実際には支払っている社会保険料などもありますので、ここからさらに給与所得控除以外の控除を引いていくことになるでしょう。最終的に残った金額に対して所得税の計算をし、源泉徴収されている金額のほうが大きければ還付金の手続きを行うことができます。反対に足りなければ納税義務がありますので、税を納めなくてはなりません。
給与所得控除の計算式は収入180万円以下、180万~360万円、360万円~660万円、660万円~850万円、それ以上の区分で分かれています。

給与等の収入金額が660万円以上850万円未満の場合

収入が670万円だった場合も計算してみましょう。先ほどの計算とは異なり、今度は収入の金額の10%+110万円が給与所得控除となります。10%になると急に少なくなってしまったように思うかもしれませんが、固定でついてくる後ろの数字が大きくなっているので、負担が急激に増えたり減ったりすることはありません。
収入670万円で計算すると給与所得控除は177万円となり、493万円が課税所得となります。ここから他に引くことができる控除を利用していき、最終的に残った金額に対して一定の割合を賭けた金額で所得税の計算ができます。所得が大きくなると住民税や保険料なども高くなっていくようにできているので、正しく計算して税負担を減らした方が、余裕のある生活ができるでしょう。

給与等の収入金額が850万円以上の場合

2020年の改正によって、収入の多い人にとっては税負担が多くなるようになりました。具体的には850万円が負担増のラインと覚えておきましょう。これまでは給与所得控除の上限が収入1000万円以上の人に対して220万円だったのですが、2020年からは850万で上限に到達してしまい、さらに控除される金額も25万円減額されたからです。
年収が850万円の人の課税所得は655万円、年収が2500万円の人の課税所得は2305万円となります。
収入が増えれば増えるほど給与所得控除の割合が小さくなってしまいますし、給与所得は総合課税なので、収入が大きければ大きいほど税負担が大きくなる累進制でできています。累進制を取ることによって日本は貧富の差を小さくしています。

所得金額調整控除とは?

特別障害者に該当する人

  • 身体障害者手帳に
  • 身体上の障害の程度が1級又は2級と記載されている人
  • 精神障害者保健福祉手帳に障害等級が1級と記載されている人
  • 重度の知的障害者と判定された人
  • いつも病床にいて
  • 複雑な介護を受けなければならない人

収入が850万円を超える人が利用できる控除に、所得金額調整控除というものがあります。これは身体障害者手帳に、身体上の障害の程度が1級又は2級と記載されている人、精神障害者保健福祉手帳に障害等級が1級と記載されている人、重度の知的障害者と判定された人や介護が必要な人が利用できます。

23歳未満の扶養親族がいる人

23歳未満の扶養家族がいる人も所得金額調整控除を利用できます。これまでは扶養親族といえば16歳以上でしたが、所得金額調整控除では0歳から23歳未満の人を対象にすることができます。
大学を留年せずに卒業して親元を離れるまでを想定した制度で、税負担によって子育てや教育に影響が出ないようにしています。留年してしまった場合は学生であっても対象から外れてしまうので注意しなくてはなりません。子供が複数いる場合は一番下の子が23歳になるまで利用できる制度です。

特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる人

特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる人も、所得金額調整控除を受けることができます。今までは基礎控除が38万円だったため、合計所得金額の要件が38万円でした。しかし2020年からは基礎控除が48万円まで奏楽されているため、要件も48万円に改正されました。
控除できる金額は収入ー850万円の10%なので、決して大きい金額ではありませんが、こうした控除を複数利用することで課税所得を減らして、上手に減税することができます。

まとめ

給与を受け取っている人は年末調整をしていれば自分で確定申告をする必要はありません。しかし利用できる控除があるのであれば、確定申告をして正しい金額で計算しなおしたほうが良いです。所得によって翌年の住民税や保険料、年金の金額が変わってくることもありますし、還付金を受けることができる場合もあるからです
税制を詳しく知っていれば上手に生命保険控除や医療費控除を利用して生活を楽にすることも可能でしょう。控除できる対象はたくさんありので、自分が対象になっているものがないかどうか探してみるのも良いです。生活を豊かにするためには給与を増やしていくことも大切ですが、払いすぎている税金を見直して無駄な出費を抑えることも重要です。

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