源泉徴収票というと会社員の場合には年末調整というイメージがあります。では、確定申告の場合には必要なのでしょうか。
源泉徴収票とは?
源泉徴収は、給与等を支払う側があらかじめ税金を差し引くことをいいます。その際に作成する書類が源泉徴収票になります。源泉徴収票には、給与等の支払金額や差し引いた税金の額などが記載されています。日本では申告納税方式が採用されており、働いて収入がある人は自分の所得から税金を計算して税務署に申告することになっていますが、一人一人個別に手続きを行うと税務署も大変なので、年末調整という制度が導入されています。給与等を支払う側は、源泉徴収票を2通作成します。1通を税務署に提出し、もう1通を給与等を支払った相手に交付します。会社員であれば、勤めている会社から交付されます。
源泉徴収票には3種類ある
給与所得の源泉徴収票
源泉徴収票で最も馴染み深いのは、給与所得に対するものです。給与所得のものには、1月1日から12月31日までに支払われた給与の総額や源泉徴収された税額などが記載されています。会社員だと年末調整の時期に会社から交付されます。
退職所得の源泉徴収票
退職所得の源泉徴収票は、退職手当などの金額や源泉徴収税の金額などが記載されています。長年勤めた会社を退職する際には、退職金を受け取る人も多いと思います。その場合、勤めていた会社を退職した日から1か月以内に会社から交付されます。
公的年金等の源泉徴収票
公的年金等の源泉徴収票は、1月1日から12月31日までの1年間に支払われた年金の総額や源泉徴収税額などが記載されています。支払いを受けた年の翌年、1月31日までに交付されることになっています。
源泉徴収票はいつ発行される?
年末調整の後
会社員の場合には、源泉徴収票が発行されるのは年末調整の後になります。年末調整は毎年12月の年末に行われるものです。そのため12月に発行されることが多いですが、発行期限は1月31日なので1月になることもあります。会社員の場合には、原則自分で確定申告を行う必要はありません。
従業員の退職の後
会社員が退職した際にも発行されますが、退職した日から1か月以内となっています。1月1日から退職日までの給与に基づいた源泉徴収票になります。その年の年末までに就職しなかった場合には、確定申告で使用します。
源泉徴収票の各項目を解説
支払金額
「支払金額」とは1年分の額面の給与等の合計額になります。給与や残業代などの時間外手当、ボーナス(賞与)などの全てを含んだ合計金額になります。職種によっては特別手当などの各種手当も含まれています。1年分の合計金額なので、年収と同じになります。
給与所得控除後の金額
「給与所得控除後の金額」とは、収入(支払金額)から給与所得控除を差し引いたものになります。給与所得控除は年収(支払金額)に応じて変わるので、国税庁のホームページなどでもチェックできます。会社には事業活動のための経費がありますが、会社員にも必要な経費があるという考えが給与所得控除の元となっています。そのため一定の金額を収入から差し引くことによって支払わなければならない税金の負担も減ります。
所得控除の額の合計額
所得控除の額の合計額は、給与所得控除以外の社会保険料控除や生命保険料控除、住宅ローン控除など様々な控除の合計金額のことをいいます。
源泉徴収税額
「源泉徴収税額」は、1年間のうちに給与支払者から徴収された所得税の合計金額となっています。
控除対象配偶者及び控除対象扶養親族
控除対象配偶者及び控除対象扶養親族の欄には、配偶者控除に関する情報や扶養している親族の人数、誰を扶養しているのかなどの情報を記載します。配偶者や扶養親族の収入が一定以上ある場合には、扶養親族から外れることもあるので注意が必要です。
社会保険料等の金額
「社会保険料等の金額」は、1年間に支払った健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・雇用保険料などの社会保険料の合計金額が記載されます。会社員の場合には月々の給与明細などに、その内訳が記載されているので確認できます。
各種控除の金額
「各種控除の金額」には、生命保険料の控除額や地震保険料の控除額、住宅借入金等特別控除の額があります。住宅借入金等特別控除は、マイホームを購入するなど一般的な住宅ローンを組んだ時に生まれる控除のことをいいます。
源泉徴収票がない場合はどうする?
源泉徴収票を紛失してしまい、確定申告ができなくて困っているということもあると思います。そういった時には、発行元にお願いをして再発行してもらわなければいけません。再発行はさほど難しい手続きではないので、大抵の場合にはすぐに応じてくれるでしょう。
紛失したわけではなく担当者がルーズでなかなか交付してもらえないような場合には、その会社を管轄している税務署などに相談すると会社に対してスムーズに発行するように指導してくれます。もし、その会社が倒産してしまったなど入手できないような場合には、税務署に源泉徴収票不交付の届出書を提出する必要があります。確定申告書を作成する時には、給与明細などから自分で計算を行うことになります。
まとめ
源泉徴収という制度は、給与支払者等があらかじめ税金を給与等から差し引くことをいいます。その際に給与等の支払額や所得控除の金額、源泉徴収税額などが記載されているのが源泉徴収票になります。確定申告を行う際に欠かせない書類で、適正な申告納税を行う際には必要なものです。サラリーマンなど会社員の場合には、勤めている会社で年末調整を行う際に必要になります。もし、紛失してしまった場合には発行元に再度発行してもらうようにしましょう。
【監修者】代官山税理士法人 / 代表 大勝 健司
会計士試験合格後、監査法人に入社。幅広い事業の監査業務に従事。 その後、売上高数千億の一部上場企業(小売業)にて、企業内会計士として経理業務に従事。税理士として、決算書の作成、法人税申告書、相続税の相談から申告実務全般にも携わる。また社会保険労務士として事業会社において各保険の入退社手続き、役員及び従業員向けの退職金制度導入、就業規則の作成等に至るまでの労務を経験。社会保険の知識にも明るい。ヒトとカネの融合的視点からのアドバイスを可能とする。
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